本コラムで、侵略的な中国海洋戦略を封じ込めるにあたって、アメリカに「多くを期待できない」と指摘したが、さすがのオバマ政権といえどもアメリカ海軍駆逐艦カウペンスに中国揚陸艦が突っ込んでくる事態を受けて、対中強硬派(封じ込め派)の要請に真剣に耳を傾けざるを得なくなった。

 その結果、大西洋側と太平洋側に分散配備をせざるを得ない航空母艦戦力のうち、太平洋側の戦力を微増する作業が開始された。これにより「少しは期待できる」方向へと流れが変わる可能性が現実味を帯びてきた。

 この空母配備再編成に関しては稿を改めて論じたいが、このようにアメリカが中国海洋戦力の脅威を再認識させられた矢先に中国は次なる矢を放ち、対中戦略家やアナリストたちは「対中警戒態勢をさらに強化すべし」との警告を発し始めた。

中国が極超音速飛翔体の飛行実験を実施

 1月15日、ペンタゴンは中国が極超音速飛翔体の飛行テストを実施したらしいとの情報を公式に確認した。ただし、飛翔体や飛行実験の詳細に関してのコメントはさし控えている。

 それを受けて中国側は飛行実験実施の事実を認めるとともに、「中国国内で実施した科学的実験であり、外国がとやかく言う筋合いのものではない」といった見解も発表した。

 ペンタゴンが確認した情報によると、1月9日に中国本土上空でミサイルのような小型飛翔体が超高速で飛行した。この飛翔体は、極超音速兵器の一種の極超音速滑空飛翔体の実験機と考えられ、ペンタゴンでは「WU-14」と呼んでいる。

 飛行実験の詳細に関しては不明であるが、アメリカ自身も開発に挑んでいる極超音速兵器の開発に中国が本腰を入れて取り組んでいるという事実は確認された。