パリでいまいちばん変貌著しいエリアは、と聞かれたら、まずはSentier(サンティエ)界隈を挙げるだろう。

 区で言うと2区。地理的には町の中心と言える場所なのだが、これといってめぼしい観光名所もなく、繊維問屋が集中する下町。華やかなパリのイメージからはちょっとかけ離れた、足を踏み入れるのを躊躇してしまうような路地もある。

 だが、そういった通りのひとつが、ここ1年あまりの間に、にわかに世界の食通の注目を集めるグルメ通りと化した rue du Nil(ニル通り)に端を発して、町は明らかに活気づいた。

IT起業家を惹きつけたサンティエ地区の魅力

パリ2区サンティエ地区にオープンした「NUMA」。ロゴデザインが個性的

 今回紹介する「NUMA」もまた、それに大いに加勢する存在になることは間違いない。

 去る11月14日にオープンしたこの施設を説明するには、まず母体となる「Silicon Sentier(シリコン・サンティエ)」を語るのが早い。

 「シリコンバレー」の名称をもじったこの組織は、言葉の響きがイメージさせるように、サンティエ界隈に根ざしたIT関連アクティビティの集合体、というもの。すでに10年以上前から存在している。

 そもそもどうして繊維問屋街にITだったのか・・・。

 10年以上前と言えば、パリのインターネット事情はまだまだ不安定なものだったが、この界隈は整備が比較的進んでいた。

 しかも、パリの中心部というロケーションの割には賃貸料が安い。そういった条件が、IT起業家の卵にとってはかなり魅力的だったのだ。と、これはNUMAのスポークスマンを務める Marie Vorgan le Barzic(マリー・ヴォーガン=ル=バルジック)さんの解説。

 まずはその点と点、小さな起業家たちを束ねる形で、シリコン・サンティエは生まれたのだった。

協賛組織として、大手企業のほかにパリ市、イル・ド・フランス地方といった公の機関も名を連ねている
建物の中は、全体を通してビジュアルデザインにもかなり力を入れていることが感じられる