マット安川 地域再生のスペシャリスト・木村俊昭さんをゲストに迎え、日本の地域開発やまちおこしの現状、「できないをできるに変える」プラス思考のお話などをうかがいました。

できることは自分たちで! 成功する地域おこしは行政に頼らない

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:木村俊昭木村 俊昭(きむら・としあき)氏
東京農業大学教授、公益社団法人日本青年会議所アドバイザー兼地域プロデユーサー育成塾長、一般社団法人北海道活性化機構代表理事、地域活性学会理事(広報交流委員長)などとして全国各地で講演・現地アドバイスなどを実施中。主な著書に『「できない」を「できる!」に変える』『自分たちの力でできる「まちおこし」~18の地域で起きた小さな奇跡』(写真:オフィスヤスカワ提供、以下同)

木村 鹿児島県鹿屋市に柳谷(通称やねだん)という、人口300人の集落があります。鹿児島空港からバスで鹿屋市までは2時間。そこからタクシーに30分乗ってようやくたどり着くところです。いったいだれが行くのかと思ってしまいますが、年に5000人もの人がここを訪れるんです。

 集落のリーダーは72歳の町内会長。彼の根本的な考え方は、重視すべきは未来を担う子供たちの育成であり、それには地域の産業・文化を活性化する必要があるってことです。で16年前、彼は集落の先頭に立ってそのための取り組みを始めました。

 サツマイモを植え、焼酎や味噌を作り、土着菌を作った。これをだれひとり欠けることなく、集落みんなでやるんですね。反対者も反目者もいましたが、焦らずじっくり「全員野球」に持っていきました。

 そんな地道な取り組みの中から生まれたのが焼酎「やねだん」です。今では韓国に輸出したり、現地に「居酒屋やねだん」をオープンしたりするほどの成功を収めています。

 みんなで稼いだお金を使って、次に始めたのは空き家の修復です。100年以上前からの空き屋を一軒一軒直して、そこに全国からアーティストを招こうというんですね。すでに7人のアーティストとその家族が住んでいます。

 芸術家が来たんだからと町内会主催で芸術祭を開いていて、これも外から人を呼ぶ引力になっています。

 お年寄りがみんな元気で医療費の抑制に成功していること、集落の避難所に太陽光発電と風力発電を導入して決して停電しないようにしていることなど、できることは自分たちでやる姿勢が特徴的。地域おこしの理想型だと思います

地元の魅力に気づく。子どもも巻き込んでじっくりそれを磨く

 柳谷のケースからも導き出せることですが、地域活性化に必要なことの第一は地元の産業や歴史、文化をしっかり掘り起こすこと、それを地元から世界に発信できるくらいまで磨き上げることです。