(英エコノミスト誌 2013年12月21・28日合併号)

習近平氏は急ピッチで権力基盤を固めた。そして今、その力を見せつけている。

中国「玉兎号」、月面からカラー画像送信

中国国営の中国中央テレビ局(CCTV)が放映した、無人月探査機「嫦娥3号」が撮影した無人月面探査車「玉兎号」の画像〔AFPBB News

 中国のある新聞が書いたように、それは「チャイニーズドリーム(中国夢)の新たな幕開け」だった。

 12月15日、中国メディアの評論家の頭の中には、1969年にニール・アームストロング船長のブーツが月面に残した跡にほぼ匹敵するようなイメージがあった。

 1976年以降初めて母船の宇宙探査機が月面への軟着陸を成し遂げた後で、中国の月面探査車「玉兎(ぎょくと)号」が月の埃を削った「中国の足跡」がそれだ。

 地上管制センターにいた習近平国家主席は、その画像がスクリーンに映し出されると、手を叩いた。チャイニーズドリームの旗振り役として、それは大切な瞬間だった。

強い国家と強い軍を目指すチャイニーズドリーム

 習氏は2012年11月に政権の座に就いた数日後に「チャイニーズドリーム」というスローガンを打ち出した。それ以降、スローガンは中国全土に広まり、広告看板やプロパガンダ用のポスターなど、至る所で見られるようになった。

 習氏が権力掌握を強めた先月の中国共産党中央委員会全体会議で採択された決議には、このスローガンが2回取り上げられている。習氏は、チャイニーズドリームには「強い国家の夢」と「強い軍の夢」が含まれると述べており、特に全体会議以降は、絶対的指導者のイメージを強調してきた。

 地域における中国の一部行動も、ますます強硬になっているようだ。12月5日、中国海軍の艦船が南シナ海で、米国の巡洋艦と異常接近する緊迫した局面があった。双方とも当初は沈黙を保ち、米政府高官が米巡洋艦カウペンスが中国艦船との衝突を避けるために回避行動を余儀なくされたことを明らかにしたのは、1週間以上経過した後だった(カウペンスが回避行動を取った後、中国艦船は前方を通過した)。

 この事態は、米国の巡洋艦が中国唯一の新しい空母「遼寧」を監視していた際に起きた。遼寧は、対立する領有権主張に引き裂かれる海域に処女航海を行うところだった(遼寧は、9月に発行された4種類の「チャイニーズドリーム」記念切手の絵柄の1つとなっている。あと2枚は中国の宇宙船、もう1枚は深海潜水艦が描かれたもの)。

 米国は、国際水域でのニアミスについて中国に抗議した。しかし中国の新聞は、カウペンスが「中国の国家安全保障」を脅かしたと非難した。このニアミスは、中国が重要な貿易ルートである南シナ海を自国の裏庭として主張しようとしているとの米国の懸念を高めるだろう。