(英エコノミスト誌 2013年12月14日号)

首相は選挙に踏み切るが、それだけでは反対勢力を満足させられない。

タイ首都で14万人デモ、首相は解散・総選挙を表明

12月9日、タイ・バンコクの政府庁舎を目指して行進する反政府デモ隊〔AFPBB News

 12月9日の昼下がり、タイの革命を目指す運動の指導者、ステープ・トゥアクスパン氏は仮設舞台の上から、バンコクの官庁街を占拠したことを祝っていた。

 ステープ氏の前には、1万人を超える同氏の献身的な支持者たちに取り囲まれ、閉鎖されて空っぽの首相公邸が立っていた。ほんの一握りの兵士が周辺の門を守るために残されていた。

 1カ月に及ぶ抗議行動の高まりの後、ステープ氏は、政府を倒す最後のひと押しをするために、大勢の参加を呼びかけた。そして、望んだものを手に入れた。

「タクシン体制」打倒を目指す

 ステープ氏は、政府を「タクシン体制」と呼んでいる。首相はインラック・チナワット氏だが、インラック氏の背後にいる権力者は、2006年に軍事クーデターで首相の座を追われた兄、タクシン・チナワット氏だ。

 インラック氏が2011年に地滑り的勝利を収めて首相に就任してから、タクシン氏は自主亡命しているドバイから政府を支配してきた。ところが今、インラック氏の支配力は明らかにぐらついているように見える。抗議者たちがまだ官庁街全体を占拠していないうちに、インラック氏は、議会を解散し、2月2日に選挙を行うと発表した。インラック氏が期待したのは、反政府の抗議者たちを家に帰るよう説得することだった。

 「国の方向性と誰が国を統治する多数派になるのかを国民に決めてもらいましょう」。インラック氏は12月8日のテレビ演説でこう述べた。それは、激烈なステープ氏をなだめるには十分ではなかった。

 群衆を背にしたステープ氏は、インラック氏は選挙まで暫定首相としてとどまることさえしてはならないと主張する。インラック氏とその政府は退陣し、タイの政治からチナワット一族の影響力をすべて一掃する方策を練る、「品行方正な人たち」から成る「国民会議」に道を譲らなければならないと言う。

タクシン元首相、28日にタイ帰国へ、クーデター後初

亡命しているタクシン・チナワット元首相〔AFPBB News

 ステープ氏の市街戦闘員たちの中には、インラック氏にタイから完全に出て行ってもらい、亡命している兄と合流してほしいとさえ思っている者もいる(タクシン氏がタイに戻った場合には、汚職と職権乱用の罪で2年の禁固刑が科される)。ステープ氏は、自らと連携して実質的に別の政権を樹立するよう政府職員全員に呼び掛けている。

 ステープ氏の「命令」(ステープ氏はこう呼ぶ)と要求は、ほとんどクーデター未遂同然だ。