カンボジアに移住した日本人クリエイティブデザイナーと、日本で経験を積みカンボジアに帰国したカンボジア人ITエンジニアのコラボレーションによる、“スマホ”ゲームを通した日本とカンボジアの架け橋プロジェクト。

 今や誰もが手にしているスマホのバーチャルなゲームを通じて、日本人とカンボジア人がリアルにつながり、結果的に日本からカンボジアへの社会貢献活動が実践されている。

「そーしゃる天使」に込められた2つの意味

 「そーしゃる天使」の“そーしゃる”という言葉が、すでに普及しつつあるソーシャルゲームという単語の“ソーシャル”を社会貢献活動の意味合いで再定義している一方、“天使”の意味合いにも2つの意味を込めているという。

 「絵を描いているカンボジア人の子供たちや絵のキャラクターたちも“天使”ですが、ゲームを楽しんでお金を使ってくれるプレイヤーの皆様も、そのお金がカンボジア支援に使われるという意味で“エンジェル(天使)”である、という意味が込められています」(中村)

 創業間もない企業や事業に対し資金を供給する富裕な個人を“エンジェル投資家”と呼ぶが、ゲームにお金を使ったプレイヤー自身が、カンボジアの子供たちの将来のためにお金を提供する“エンジェル”となっている、というわけだ。

中村英誉氏(左から3番目)とソーシャルゲーム「そーしゃる天使」の開発メンバー。日本人デザイナーとカンボジア人ITエキスパートたちによるコラボレーション開発企画はさらに続くとのこと

 カンボジアと日本の架け橋として、まずは日本向けに始動したこのプロジェクト。

 英語が堪能なカンボジア人IT人材の力をもってすれば、日本語バージョンである現行ゲームの英語化はそう難しい話ではない。中村とモムが眺める先は、当然日本向けのみにはとどまらない。

 寄付や募金、ボランティア活動等による、従来型の社会貢献活動の枠組みを超えた、バーチャルゲームを通したリアルソーシャル活動。

 今回ご紹介した「de_main」や「そーしゃる天使」が、この新たな潮流の先頭ランナーだとすれば、その起点が共にカンボジアから発していることは、カンボジアを拠点に活動する筆者としては喜ばしい限りである。

 今後、今回ご紹介した以外の様々な分野から、カンボジアを舞台として日本とのコラボレーションから生まれてくる、さらなる新潮流に期待したい。

(文中敬称略)