(英エコノミスト誌 2013年12月7日号)

孤独と貧困が自殺を招いている。

 義理の息子による訪問は、11月下旬恒例の「孝」の証だった。だが、病気を患う義理の両親のために息子が持参した、冬いっぱい持つ自家製キムチは必要とされなかった。「子供たちの負担になりたくない」。82歳になる父親は閉め切られた自宅に、遺影用の写真2枚と遺書1通とともに、こう書いたメモを残していた。

 マスコミはすぐに、映画「拝啓、愛しています」の老夫婦の死との類似点を指摘した。2011年に大ヒットした、老いをテーマとした異色の韓国映画だ。

急増する「静かな自殺」

 韓国ではその年、65歳以上の高齢者が4000人以上も自殺した。その割合は1990年の5倍、先進国平均の4倍近くに上った(表参照)。

 しかし、こうした「静かな自殺」がティーンエイジャーの自殺ほど注目を集めることは滅多にないと、ソウル大学校の精神科教授で、韓国自殺予防協会会長のアン・ヨンミン氏は語る。

 若者の自殺は助けを求める叫び声と見なされ、多額の政府資金が対策に投入されるが、その件数は経済協力開発機構(OECD)の平均と同水準だ。

 高齢者による自殺未遂件数は若年層の10倍に上る。自傷行為による健康被害は、保険制度の適用外となることも問題になる。

 高齢者による自殺は、多くの場合、入念に計画されている。その分、若者の衝動的な行動よりも簡単に防止できるはずだと、韓国自殺防止センターのキム・ヨンスク氏は話す。

 今年、高齢者の自殺防止のために初めて25億ウォン(230万ドル)の予算が組まれ、その一部が、自殺の兆候を見極められるよう介護人8000人を訓練するのに役立った。ソウルでは、地元ボランティアが定期的に高齢者に電話する「テレ・チェック」サービスがある。

 ソウル市内に29カ所ある国営高齢者福祉センターの多くは、宅配弁当サービスを実施している。センターに行くことを希望しながらも、体が弱く1人では動けない場合、高齢者を送迎するサービスもある。