(英エコノミスト誌 2013年12月7日号)

ブラックロックは、創業から25年で世界最大の投資家になった。その圧倒的な市場影響力は問題になるだろうか?

 陰謀論者に「世界を本当に動かしているのは誰か?」と問えば、恐らくシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースといった世界的な銀行の名前が挙がるだろう。エクソンモービル、シェルなどの石油大手を挙げる人もいるかもしれない。あるいは、アップル、マクドナルド、ネスレなど、何十億もの消費者を取り込んでいる消費財企業に目を向ける人もいるだろう。

 彼らが名前を挙げそうにない会社の1つが、米ブラックロックだ。この資産運用会社の名を聞いてぴんとくる人は、金融業界以外ではほとんどいないはずだ。だが、ブラックロックは、上で挙げたすべての企業の最大株主だ。さらに、米国だけでなく世界中で、ほぼすべての上場企業の株式を保有している(実際、ブラックロックは本誌=英エコノミストの筆頭株主であるピアソンの筆頭株主だ)。

 同社の業務範囲は、株式だけにとどまらない。社債、国債、コモディティー(商品)、ヘッジファンドなどもカバーしている。ブラックロックは2位を大きく引き離す世界最大の投資家で、直接運用している資産は4兆1000億ドルに上り(すべてのプライベートエクイティとヘッジファンドの合計額とほぼ同じ)、運用プラットフォームのアラディンを通じて、さらに11兆ドルを監督している。

 ブラックロックは、ラリー・フィンク氏を中心とするウォール街の面々が1988年に創業した。同社の成功の一因は、S&P500などの株価指数と連動した上場投資信託(ETF)のような「パッシブ」な投資商品の提供にある。こうした投資商品は、クライアントよりも資産運用会社の懐を潤す従来のミューチュアルファンドに代わる安価な選択肢だ(もっとも、ブラックロックはミューチュアルファンドも多く扱っている)。

 ETF分野は急速な成長を続けている。ブラックロックは、「iシェアーズ」ブランドなどを通じて、規模が利益をもたらすETF業界の最大手となっている。その結果、アラブのソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系ファンド)から小規模な個人投資家に至るブラックロックのクライアントは、莫大な手数料を節約している。

 ブラックロックが成功したもう1つの理由が、「アクティブ」に運用するポートフォリオのリスク管理だ。

 例えば、初期のブラックロックは、不動産担保証券の最大手だった。だが、郵便番号レベルの小さな地域ごとにリスクを分析したおかげで、リーマン破綻後の混乱の中で救済を受けずに済んだだけでなく、あの2008年の最悪の時期に金融システムの維持方法を米国政府などに助言し、危機後には経営に苦しむ金融機関から収益性の高い資金運用部門を手に入れた。

他人のカネ

 もっぱら国の気前の良さに頼って繁栄している多くの銀行に比べれば、顧客に価値を提供し、細部に注意を払ってなし遂げたブラックロックの成功は、正当なものと言えるだろう。

 だが、「大きすぎて潰せない」と見なされた金融機関の救済に税金が注ぎ込まれてきた現状では、これほど急速に、これほど巨大に成長した創業25年の会社は、不安をかきたてるものでもある。