ひと昔前まで日本の多くの家庭で使われていた風呂敷が、数年前、流行した。エコの意識の広がりに合わせて「バッグにしたりラッピングに使える風呂敷は便利」と若者も気づき、今風でお洒落な柄がたくさん出回ったからだ。

 その風呂敷が、このところ、フランスでじわじわとファンを増やしている。

 在仏日本人も講座を開いているが、注目すべきはフランス人のオーレリー・ル・マレック(Aurélie Le Marec)だ。彼女は、パリや地方で風呂敷の使い方を教え、日本関連のイベントに参加して風呂敷を紹介し、フランス語で風呂敷のハウツー本を出すなど、まさに風呂敷の大使として活動している。

 オーレリーが、2年前からパリのギメ東洋美術館で定期的に開いている風呂敷講座をのぞいてみた。(文中敬称略)

講座は1回2時間、一通りの包み方を体験

オーレリー・ル・マレック(Aurélie Le Marec)さん。パリのギメ東洋美術館で年に6~7回風呂敷講座を開いている。Tシャツの風呂敷を抱えたウサギは、L'atelier du Furoshikiのロゴ。誕生日にお茶の先生からもらったウサギ柄の帛紗が嬉しかったこと、このウサギが月を運んでいるように見えること(月ウサギの伝説に絡めた)、このウサギのように自分も風呂敷を抱えてあちこち移動することという深い意味を込めている(撮影:すべて著者)

 この日、ギメ東洋美術館での講座には、子どもから大人まで8人の参加者が集まった。講座は年に6~7回開催される。通常は15人が参加するそうで、ウェイティングリストでキャンセル待ちになる回もある。

 この日はいつもに比べたら参加者は少なかったが、「今日のように8人くらいだと1人ずつしっかりと見てあげられるので、本当はいいんですよ」とオーレリーは言う。

 この講座は、まず同美術館の日本関連の展示を見ることから始まる。「風呂敷の使い方をただ学ぶだけではなく、背景にある日本のことを少しでもよく知ってほしいからです。それと風呂敷の歴史、日本の伝統的なデザインの意味、環境保護についても説明します」とオーレリー。とてもいいアイデアだと感心した。

 そもそも、ギメ美術館で風呂敷講座を開くことになったのは、オーレリーの働きかけのおかげだ。パリの美術学院エコール・デュ・ルーヴル(l'Ecole du Louvre)で、インドとチベットの美術史を専門的に学んだオーレリーは、この美術館を頻繁に訪れていた。

 風呂敷に興味を持ち始めて人に教える経験を積んで、もっと教えたいと考えたとき「この場所が一番だ!」と思ったという。彼女の活動を知った美術館は「講座を開きましょう!」と快く言ってくれた。