全日本空輸・企画部長の宮川純一郎氏をゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(12月1日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。

 LCCの参入で様変わりする国内マーケットや競争激化が進む国際航空市場、全日空のグローバル戦略など、新時代を迎えた航空業界の課題や展望を語った(今回は静岡エフエム放送からの出張放送)。

格安航空会社の参入で新たに掘り起こされた国内航空需要

中山 今回は、全日本空輸・企画部長の宮川純一郎さんにお話を伺います。

 今、日本の航空産業は「ピーチ」をはじめとする格安航空会社(LCC)の本格参入により、大きな変革期を迎えています。率直にお聞きしますが、LCCに旅客を奪われる心配はありませんか。

ANA系の格安航空、ブランド名は「ピーチ」に

全日空系の格安航空会社、ピーチ・アビエーションの井上慎一CEO〔AFPBB News

宮川 ANAグループの持株会社であるANAホールディングスは、「ピーチ・アビエーション」と「バニラエア(旧エアアジア・ジャパン)」の2社のLCCに出資しています。

 よく「自社でLCCを始めると需要を食い合うのではないか」と聞かれますが、例えば関西から千歳はピーチと全日空(ANA)が両方飛んでいる競合路線であるにもかかわらず、過去1年間の需要動向を見ると20%の旅客数増となっています。

 また、同じく2社が就航する関西から福岡間にいたってはトータルで40%近く伸びているなど、LCCを設立したことで新たな航空需要が発掘されたと言えるでしょう。つまり、限られたパイを奪い合うのではなく、LCCの登場によってマーケット自体が拡大したと考えています。

中山 料金の安いLCCに対し、ANAをお客様に選んでもらうためのポイントは何ですか。

宮川 LCCは基本的に必要最低限のサービスに絞っており、それ以外は必要に応じてお客様自身が選択できるため、コストを安く設定しています。一方、ANAではお客様により安心して快適に過ごしていただけるようにいろいろなサービスをご用意したり、空港や機内においてきめ細かなケアを行います。

 また、ANAはお客様の様々なニーズに合わせて多彩な運賃体系を揃えていますが、LCCの場合はよりシンプルでリーズナブルな運賃であるのも大きな違いです。

 洋服で例えて言うなら、ユニクロなどで安く手軽に購入したいお客様と、老舗の百貨店で質の高い物を新調したいお客様のそれぞれ異なる需要を、両社で汲み取ることが理想です。