(英エコノミスト誌 2013年11月30日号)

中国が新たに設定した防空識別圏は、この地域における憂慮すべき新たな動きを示すものだ。

【図解】日中の防空識別圏

AFPBB News

 中国国防省の報道官による11月23日の発表には官僚的な響きがあった。その内容は、東シナ海に新たに設定された防空識別圏(ADIZ)を飛行するあらゆる航空機は、必ず事前に中国当局に通告し、中国の航空管制官の指示に従わなければならないというものだった。

 これに対する米国の反応は素早かった。11月26日、バラク・オバマ大統領は、B52爆撃機2機を派遣し、中国に通告することなく新しい防空識別圏を通過させた。

 このようなにらみ合いは、米中の戦略的対立がエスカレートし、1996年以降では最も懸念される状況にあることを示している。1996年には、当時国家主席だった江沢民氏が台湾海峡でのミサイル演習のために多くの侵入禁止海域の設定を命じ、米国が航空母艦2艦を派遣する事態を招いた。

 域内に入った航空機に識別に応じるよう求める空域を設定している国は数多いが、他国の領土とは重ならないようにする場合が多い。中国の防空識別圏は、日本のものと重なっている。さらに、日本の施政下にあり、尖閣諸島と呼ぶ小さな岩の塊からなる島々(中国も領有権を主張し、釣魚島と呼んでいる)に加えて、韓国が領有権を主張する、離於島(イオド)という名の暗礁の上空も含んでいる。

 この中国の動きは明らかに、中国の領有権の主張を強化するためのものだ。11月28日、日本と韓国は中国の防空識別圏圏内に自衛隊と韓国軍の航空機を送り込んだ。

若気の至り

 新興の経済大国では、地域に対する覇権意識の高まりがつきものだ。こうした大国の行動が国際基準に従っている限りは、そうだとしても問題はない。しかし、今回の件では、中国は基準に従っていない。そして、60年間にわたって東アジアにおける空と海の航行の自由を保証してきた米国が、その点を明確にしようとするのは正しい。

 中国の動きがどれほど懸念すべきものかは、その背後にある思考によって変わってくる部分もある。成長が速すぎて自分の力が分かっていないティーンエイジャーと同様に、中国は自らの行動が及ぼす影響を見くびっていた、という話なのかもしれない。米国の爆撃機は防空識別圏の周縁部をうろついていただけだとする中国の主張は、ぶざまなまでに見苦しかった。

 しかし、自らの行動が招く結果に気づかない若者は、多くの場合、トラブルを起こすものだ。中国は近隣諸国や米国との間に、今後何世代にもわたる戦争の火種を作り出した。

 それだけに、こうした挑発が意図的なものだったとすれば、さらに懸念すべきことだ。2013年に入って新たに国家主席に就任した習近平氏が掲げる「中国夢(チャイナドリーム)」は、経済改革と声高なナショナリズムの混合物だ。