(英エコノミスト誌 2013年11月30日号)

イラン核協議での合意は、現状で最善の案というだけでなく、世界でもひときわ問題の多い地域を変える可能性を秘めている。

 イランと米国は30年以上にわたり、宿敵同士だった。両国間の嫌悪感は、パレスチナ人とイスラエル人の間の憎しみと同じように、中東諸国の同盟関係の骨組みとなり、テロと戦争を煽ってきた。イランの核開発を巡る今回の暫定合意が、それを解消したわけではない――それにはほど遠い。

 だが、暫定合意が穿った鍵穴からは、今とは異なる、今よりも好ましい中東の姿が垣間見える。それは実現に向けて努力するに値する展望だ。

 米国を中心とする世界の主要6カ国とイランは、11月24日未明、イランの核開発に関する6カ月間の暫定合意を成立させた。この合意により、イランは核開発計画をほぼ現在の能力水準にとどめ、世界はイランに対する制裁措置を若干緩和することになる。

 しかし、今回の合意で最も重要なのは、その先に予想される展開だ。イランが自制心を示し、世界がそれに報いれば、交渉者の間に友好心が生まれ、より永続的かつ包括的な合意が成立する可能性がある。そうなれば、世界でもひときわ問題の多い地域で、米国とイランが協調を強める――少なくとも反目を弱める――道が開けるはずだ。

決して無意味な合意ではない

 湾岸アラブ諸国とイスラエル(そして米国連邦議会のイスラエル支持派)は、そのような展望は全くの妄想だと主張している。彼らは1938年のミュンヘン会談の際のネビル・チェンバレン英首相の宥和策を引き合いに出し、世界は今、核兵器のことしか頭にない攻撃的な悪徳政権に譲歩しようとしているのだと警告する。

 イランは、長年にわたる話し合いの中で、裏表のある不誠実な国という悪評を得ている。テロを支援し、シリアのバシャル・アル・アサド大統領を中心になって支え、イスラエルには国の存続に関わる脅威を与えている。イラン政府がワシントンの「大悪魔」に対する反感を煽っているのは、偶然のなりゆきではなく、自らの権力を正当化するためだ。

 従って、イスラエルのタカ派、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回の合意を失敗と批判し、イランは合意を守らないか、最終合意の交渉を阻止するはずだと主張している。米国は同盟国に犠牲を強いて、卑劣な政権に見返りを与えた――イランを交渉のテーブルに着かせたのは、制裁措置とイスラエルによる攻撃を持ち出すという強硬路線であり、核開発を放棄させるには、強硬姿勢を強める以外に道はない、というのがネタニヤフ首相の主張だ。

 本誌(英エコノミスト)の見方は、リスクという点でも成果という点でも、それとは異なる。イラン相手では何をしても賭けになるが、短期的に見れば、賭けが裏目に出ても欧米が失うものはそれほど多くない。