現今の内外情勢は憲法に基づく安全保障体制の整備を要求しているが、現憲法ではそれを期待することができない。安倍晋三内閣はその認識のもとに対応努力をしている。絶大な人気を誇った小泉純一郎氏をはじめとした歴代内閣が達成できなかったことである。

 この難関を突破するためには、政権党が一致団結して国民の信を得ていくよりほかに道はない。そうした時に、小泉氏の即原発ゼロ発言と行動は、党内に無用の混乱と摩擦を持ち込み、安倍政治にブレーキをかけ、ひいては日本の安全に悪影響を及ぼしかねない。

3.11後の日本の現状

 3.11では地震・津波に原発事故が重なり、複合災害をもたらした。原発の技術的ミスも指摘されるが、想定外の津波による建屋の配置や予備電源への配慮不足などの影響が大きかった。さらに政治のリーダーシップ不足が被害を相乗的に拡大し、有効は放射能対策を遅らせることになった。

 しかし、当時の為政者たちは自分のミスを原発の危険性にすり替え、原発ゼロ運動に結びつけて平然としている。国民の安心・安全よりも、自分の思想信条の主張で、1基の原発も稼働できない状況にしてしまった。

 総電力需要の30%をカバーしていた原発の穴埋めを数%の供給能力でしかない自然エネルギーで賄えるはずもない。背に腹は代えられず、老朽化して休止していた火力発電の再稼働に頼らざるを得なくなった。

 こうして、2012年の石油や液化天然ガス(LNG)などの化石燃料依存度は92.1%となり、1973年の第1次エネルギー危機時の94%に迫る状況である。脱化石燃料依存を目指してきた日本であるが、40年前の石油危機時の水準に逆戻りするお粗末である。

 火力発電の半分を占めるLNGは調達先が豪州やマレーシアなどに分散され、17年からは米国のシェールガス輸入も進み、中東依存(現在25%)は比較的低いが、備蓄施設などが整備されていない分、大規模な非常時対応には問題がある。

 他方で、石油の中東依存度は40年前の石油危機時は78%であったが、その後の中東情勢の安定で依存度はかえって高まり、現在は9割に近い。

 原発停止による化石燃料依存の高まりで貿易赤字が続いており、今年上半期は過去最大の5兆円に達している。震災後の3年間で10兆円以上の国富が流出すると試算されている。昨年から電力会社10社のうち6社が1割弱の電気料金値上げをしており、東京電力に至っては3割増となり家計を圧迫し、中小企業にも深刻な打撃を与えている。

 来年4月からは消費税が3%上乗せされ、アベノミックスは正念場を迎える。当座の日本経済の再生や家計への圧迫予防には原発の再稼働しか道がない。