(英エコノミスト誌 2013年11月16日号)

大規模な構造改革に臨む覚悟に見える安倍首相だが、あまりに動きが遅すぎる。

消費税8%、安倍首相が正式表明

安倍晋三首相は構造改革にコミットしているように見えるが・・・〔AFPBB News

 日本の中部地方では長年、ある農家が体制に抵抗し続けている。

 愛知県の岡本重明氏は家業として受け継がれてきた菊の栽培をやめた。菊は皇室の紋章にも使われている花だ。菊の出荷は、国の支援を受けて農業の大部分を抑えつけている巨大組織、全国農業協同組合連合会(JA)に同氏を縛ることになるというのが、栽培をやめた理由だ。

 岡本氏はJAの流通システムを通さなくても販売できるイチゴの栽培を学んだ。しかし、政府は現在、JAよりも岡本氏のような反抗勢力の声に耳を傾けている。岡本氏は安倍晋三首相による経済再生計画の一部をなす「経済特区」の新設に先立ち、農業関連のルール策定に関わっている。

3本の矢と言うけれど・・・

 経済再生計画は3本の矢から成る。1本目は金融政策に関するものだ。安倍首相は2013年に入り、長期にわたるデフレからの脱却を目指し、抜本的な金融緩和を実施するよう中央銀行に迫った。2本目は景気刺激のための大規模な財政出動だ。ただでさえ膨らんでいる政府の借金を増やした財政出動に、どれだけの効果があったかは不明瞭だ。

 だが、金融緩和に効果があったことは、よりはっきりと分かっている。15年間のデフレを経て、現在の物価水準はわずかな下落にとどまっており、株価は1年前よりはるかに高い。また、金融緩和に伴う円安のおかげで、大手の輸出企業は利益を伸ばしている。

 国外のポートフォリオ投資家は「アベノミクス」について語る際には、この抜本的な金融政策のみを指すケースが増えている。安倍首相は自らの計画には3本目の矢もあると約束しており、これが当時は投資家に希望を与えた。これはすなわち、日本経済に対する野心的な構造改革だった。

 こうした改革により、農業や労働市場、医療分野が抜本的に改革されるはずだった。現在、一部の投資家はこれらの改革への関心を失ったと明言している。短期的に見ると、一部の改革は、デフレにつながる。サプライサイドを重視した改革が潜在的な経済成長率を押し上げるには、長い時間がかかる。

 それでも、これらの改革が実行されるかどうかによって、自国を立て直すという安倍首相の覚悟の本気度が分かるはずだ。

 構造改革の最初の内容が6月に明かされた時、約束は期待とはほど遠いものだった。当時、安倍首相が率いる自民党は重要な意味を持つ参議院選挙を7月に控えており、リスクを取ることに消極的だった。選挙に勝利すると、安倍首相は、自らの肝いりで進める経済特区の詳細を含め、秋に改革の第2弾を実行すると約束した。