(英エコノミスト誌 2013年11月9日号)

世界で最も利用件数が多いクレジットカードユーザーから利益を得ることが難しくなっている。

 韓国は競争社会として悪名高い。だが、激しいステータス争いを繰り広げている人たちは、一体どうやって自分たちが勝ったことが分かるのだろうか? 恐らく、現代自動車の子会社、現代カードが発行するクレジットカード「ブラック」への申し込みを招待された時だろう。

 「リキッドメタル」――商標登録された合金で、徹甲弾に適した素材――で成型されたカードは、ずっしりと重い。そして稀なカードでもある。これまで発行されたブラックカードの数はわずか2000枚ほどで、将来的にも最大9999枚しか発行されない。

 ブラックカードの会員になるためには、多額の純資産のみならず、高い社会的地位がなければならない。カードには高額の会費がかかり、特典がたくさん用意されている。例えば、会員は以前、ニューヨークから空輸された出展品を呼び物にしたクリスティーズの擬似オークションに招待された。

 だが、人々がブラックカードを欲しがる主な理由は、それがなかなか手に入らないからだ。

世界一のクレジットカード社会

 カードが手に入り辛い状況は、見境なくクレジットカードが発行される韓国では珍しい。韓国では、労働人口1人当たり4.4枚相当のカードが出回っている。通信社の聨合ニュースによれば、2011年の韓国人1人当たりのクレジットカードの決済件数は129.7件で、どの国よりも多かった。それに対して、カナダ人1人当たりの決済件数は89.6件、米国人は77.9件だった。

 クレジットカードの人気は、1997~98年のアジア金融危機の直後にさかのぼる。政府はカードを奨励することで消費を促し、税務署が追跡するのが難しい現金払いを減らそうとした。政府はさらに、カード利用者に税控除措置や、宝くじの券まで与えた。

 クレジットカードの普及は2003年に、支払い遅延と倒産の波で一旦中断された。だが、カード利用はすぐに増加基調を取り戻した。商店は購入額がどんなに小額でも、クレジットカードでの支払いを受け付けなくてはならない。韓国人はカード会社が提供する果てしないプロモーションを利用するため、財布に複数枚のカードを入れている。

 現代カードは、クレジットカードをクールなものにし、債務を魅力的に見せることにさえ成功した。大半の金融会社とは異なり、同社はカードの発行元の企業ではなく、カード自体を前面に打ち出した。そして、カードが提供する特典でなく、カードが醸し出すイメージで競争した。

 同社はデザインとマーケティングに多額の投資を行った。そして、英語と韓国語の両方に適した独自の書体を開発した。現代が発行するあるクレジットカードは、カードでいっぱいの財布の中で目立つよう、オレンジ色の縁取りを施していた。