私は正社員とパートさんは別ですなんて考えてない。でも、確かに無理やりやらされてる感があるかも分からん。素晴らしい人間になりましょうというのは、会社がおせっかいなことしてるだけやな、ということになる。

 ということは、うちの経営理念はまだ社員の思いとかけ離れているということです。社員一人ひとりの、こうなりたい こうしたいという思いと会社の成長を重ね合わせるためにはどうすればええんやと。

 そこで次に思いついたのが、社員の夢、10年後に自分はこうなっていたいという姿を書いてもらうことです。プライベートな夢とこの会社の発展がどう結びつくか、作文してくださいと言って書いてもらったんですよ。

──どんな夢が出てきましたか。

藤原 ペットが好きな社員は、会社のなかでペットの躾け教室のあるペットショップを開きたいと書いてきました。屋上にはハーブ庭園をつくって、お客さんが待っている間にハーブティーを飲んでもらうんだとのことです。また、親の介護をしている社員は、介護の資格を取って、この会社で介護施設を運営して親の面倒を見たい、社長も将来面倒を見てあげますとのことでした(笑)。ロボットをつくりたいという社員もいました。

工場内の作業風景

 それを読んで、私はみんなに言いました。金型工場もあるしロボット工場もあるし、社員食堂も保健施設も保育所もある。野球場もあってサッカーグラウンドもある。そんなすごい会社をみんなでつくろうやないか、全員がそれぞれの目標を達成できるような会社をつくろう。そのためには一人ひとりの社員がもっと自律的に働いて成長する人間にならなあかんよ、当然素晴らしい人間になっていかなあかん。自分から素晴らしい人間になるんやで、ということです。

 みんなの夢は、確かに現在のプレス加工の仕事からはかけ離れています。でも私はこの会社で働くことにみんなが夢と希望を持つことが大切だと思っています。そもそも日本の電子部品業界はこの先どうなるか分からない。基板加工の仕事はどんどん海外に出ていって、日本からなくなってしまうかもしれません。そのとき、もしかしたらみんなの夢の中から別の事業の柱が生まれるかもしれない。