日本一の会社になったら仕事がいっぱい来る、値段の安い仕事はせんでいい、そうなったら給料もいっぱい取れる、ボーナスもちゃんと持って帰れるぞと。社員にそう説明して「日本一の技術を持った会社にしよう」と目標を立てました。

──それまでの悔しさが反映されている。

藤原 そうですね。加工賃を買い叩かれてずっと苦しい経営でしたから。

──社員の反応はどうでしたか。

藤原 社員はみんな賛同してくれて、そうや、日本一の会社を目指そうと言っていました。でも、だんだんその目標に私が疑問を持ってきてね。

──どんな疑問ですか。

藤原 SAF工法を開発したら仕事が一気に増えたんです。高い加工賃ももらえるようになった。でも、社員は忙しくなって土日も仕事に出てこなければならなくなったんです。確かにいい給料を取れるようにはなったけど、それでみんな本当に幸せなんかなと。

 要するに、寝てる時間以外はずっと会社なんです。趣味も家族サービスも抜きに働いて、給料だけ持って帰るわけです。自分の時間をつくるためには睡眠時間を減らすしかない。それで本当に幸せかいな、人生楽しいんかいな、これはちょっと間違ってるんちゃうかと。「日本一」というのは私が言い出したんだけど、自分で疑問に思ってしまったわけです。

「素晴らしい人間」とはどんな人間か

──ずいぶん根本的な問題に突き当たりましたね。

藤原 それでみんなに提案をしたんです。自分たちで「日本一です」と評価するのもおかしいやろ、周りから認めてもらわんとあかんやろと。

 技術は日本一と評判でも、あそこの会社は社員があかんでと言われたらどないする。それは日本一の会社ちゃうで、だから私たちはもっと素晴らしい人間にならなあかん。日本一の会社と言う以前に人間性が日本一にならんとあかんのちゃうか、と言いました。

──「素晴らしい人間」ですか。定義が難しいですね。