MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、動物では初めての遺伝子組み換え食品である「遺伝子組換え鮭」について、食べても安全と評価し、環境への影響もないと発表しています。その「遺伝子組換え鮭」が、年内にも、米国で発売される予定なのです。

 この、「遺伝子組換え鮭」は、米国マサチューセッツ州に本社があるバイオテクノロジー企業、アクアバウンティ・テクノロジーズ(AquaBounty Technologies)が開発したもので、市場にある従来の鮭のサイズになるまで、半分の時間で成長します。

 なぜなら、アトランティックサーモンに、別種の大型の鮭(キングサーモンChinook salmon)が持つ成長ホルモン遺伝子が導入されているため、成長がとにかく速いのです。

 この鮭の発売に対して、米国内では反対運動が活発になっています。「アクアドバンテージ(AquAdvantage)」と命名されたこの遺伝子組み換え鮭は、消費者からは、フランケンシュタインにちなんで「フランケンフィッシュ」、あるいは「ミュータントサーモン」とも呼ばれています。

 この鮭は人体への安全性について不明な点が多く、たくさんの問題点が議論されています。

 そもそも私たち消費者は、遺伝子組み換え魚とそうでない魚の区別はできません。そこで、遺伝子組み換えの表示を求める運動が展開されています。

 ちなみに、遺伝子組み換え作物大国の米国では、遺伝子組み換え食品の表示の義務はありません。「米国だけ表示の義務がないのはおかしい」「自分が食べているものを知る権利がある」と、消費者からの反発の声が上がっています。

 一方、日本やEUを始め世界60カ国以上の国では、遺伝子組み換え食品には何らかの義務表示規則があります。

 ただし、日本の表示や流通規制はEUのルールと違ってかなり緩いため、知らず知らずのうちに遺伝子組み換え食品を大量に消費しているのが現状です。日本は現在、遺伝子組み換え作物の輸入大国なのです。

 「遺伝子組換え鮭」は、野生の鮭との接触を防ぐため、パナマにある、地上のタンクの中で育てられています。それでも万が一自然界に放された場合、従来の鮭への汚染が危惧されています。