不法移民の増加に悩む米国アリゾナ州がその摘発強化を主眼とした州法を成立させる中、一定要件を満たせば不法移民にも在留資格を与えるという移民制度改革法成立にバラク・オバマ政権が意欲を見せている。

不法移民にジレンマ抱える米国

米アリゾナ州、厳しい移民法成立に住民は賛否両論

今年5月米アリゾナ州で成立した不法移民の取り締まりを強化する法律に対して反対する人々〔AFPBB News

 「不法移民は税金も払っていないし、その増加が治安の悪化へとつながる」「自分たち米国人の仕事が取られる」というのが制限を設けたい側の主張だが、その低コスト労働あっての米国経済の繁栄という自己矛盾があることは誰しも認めるところ。

 どっちに転んでも国民の不満をすべて解消することはできない問題である。

 空路で米国に入るとなると日本やEUから行く場合に比べ、中南米からの入国審査は格段に厳しくなる。麻薬流入への懸念から税関での荷物チェックも厳重で、麻薬犬がウヨウヨいるゲートを通ることになる。

 ちょっとでも怪しいと疑われれば別室に連れて行かれテレビドラマもどきの尋問が始まるから、乗り継ぎ便に遅れないかひやひやものだ。

 そんな状況は、陸路の米国-メキシコ国境では航空機が庶民の足となる前から変わらぬもので、カルト的人気を誇る1958年のフィルムノワール映画『黒い罠』でも麻薬の流入や無法者の跋扈が国境地帯の大きな問題として描かれていた。

 しかし、今やそれ以上の問題とも言えるのが密入国者の増加。3000キロ以上にわたり延々と続く国境のわずかな隙間を狙って入り込む彼らを監視する国境警備隊の管理力にも限界がある。

 そのため、密入国者数は増加の一途をたどり、業を煮やした米国政府はこれまでなかったような高い壁を作り出したのだ。

 今も世界に実際にある壁といえばパレスチナ、キプロスといった宗教からできた壁であり、過去最大のものと言えば冷戦の象徴ベルリンの壁で、これはイデオロギーによる東西の壁だった。

 しかし、この壁は経済格差による壁、「南北問題」による壁である。この世界一の先進国と途上国が接している国境地帯は、北米自由貿易協定(NAFTA)締結後、タックスヘイブンぶりを利用して大量増殖した欧米日向けの工場「マキラドーラ」の目立つ地域となっている。