(英エコノミスト誌 2013年10月26日号)

EU懐疑派の台頭と対峙し、民主主義の赤字を埋める試み

EUのCO2排出権取引サイトにフィッシング攻撃

欧州連合(EU)に対する信頼は過去最低水準に落ち込んでいる〔AFPBB News

 批判的な向きに言わせると、欧州連合(EU)は罪の中で生まれた。民主的な正当性のない、エリートによって考案された、エリートのためのプロジェクトだ。

 1970年代に作られた用語である「民主主義の赤字」を埋めるための試みはことごとく失敗した。欧州議会(EP)の直接選挙はどうか? 1979年に直接選挙制度が導入されて以来、投票率は下がり続けている。

 EPに本当の権限を与えたらどうか? EPがこれほど影響力を持ったことはかつてなかったが、EUに対する信頼は過去最低水準にある。

 欧州の経済危機は、こうした慢性的な問題を急性のものにしている。1つの理由は、特にユーロ圏で、欧州委員会が各国の国民生活にかつてないほど深く立ち入り、予算から年金、賃金設定に至るまであらゆることに口を挟んでいることだ。

 もう1つの理由は、来年5月のEPの議員選挙で有権者からの反発が予想されることだ。辛辣な発言をする移民排斥主義の「英国独立党」から悪党のようなネオナチのギリシャの「黄金の夜明け」に至るまで、あらゆる種類の反EU、反移民政党が大きく躍進するだろう。

 EU懐疑派の政党は、フランス、英国、オランダで最も多くの票を獲得する可能性がある。フィンランドやイタリアでも健闘するだろう。ドイツでは、より穏健な装いのEU懐疑派政党が初めて議席を獲得する可能性がある。

反EU、反移民政党が来年の欧州議会選挙で躍進へ

 警戒感は明白だ。フランスのフランソワ・オランド大統領は、国家主義者とユーロ懐疑派の台頭は「後退と麻痺」をもたらすだろうと話している。イタリアのエンリコ・レッタ首相は、EU懐疑派が最大で3分の1の議席を獲得する可能性があると見ている。

 急進派とポピュリストは異質な集団であり、政策に影響を与えるより演説することを好むため、中道派はまだ議会の仕事をこなすことができるはずだ。こうした勢力がもたらすより大きな影響は恐らく、民主政治に毒を盛り、それが各国政府の意思決定を阻むことだろう。

 どのように対処すべきなのだろうか? レッタ首相は、EP議員選挙を欧州委員会の次期委員長を目指す争いに変えることで、EU支持派勢力を活気づかせたいと考えている指導者の1人だ。

 EPで多数を占める各国政党の幅広い連合体である主要な政治「会派」は、それぞれに「委員長」候補を応援する選挙運動を展開すると話している。社会主義系の会派は、気骨のあるドイツ人のEP議長マルティン・シュルツ氏を選ぶ可能性が高そうだ。緑の党系は、開かれた予備選を計画している。選挙後も最大会派にとどまる可能性が高い保守派は、まだ決めかねているように見える。