(英エコノミスト誌 2013年10月26日号)

米国経済界が、煩雑な規制と高い税金の影響で変質しつつある。

 1996年、米エネルギー企業エンロンの社長を務めていたリチャード・キンダー氏が、同社トップのケネス・レイ氏の後を継ぐのは確実と見られていた。だが、それは実現せず、キンダー氏の最高経営責任者(CEO)就任は見送られた。見たところ、米国で最も革新的な企業の舵を取るには、キンダー氏は保守的すぎると判断されたようだ。

 キンダー氏の次なる動きは、パートナーとともに、いくつかのパイプラインと石炭ターミナルを元の雇用主であるエンロンから買い取ることだった。さびつくモノを買うとは、どういうことか。それはまさにオールドエコノミーだった。

 それから16年経った今、キンダー氏に勝ってエンロンのCEOに就いた人物は刑務所の中におり、エンロンという名前は不正会計の代名詞となった。一方、キンダー氏のパートナーシップ企業、米キンダー・モーガンの時価総額は1090億ドル、キンダー氏個人の持ち株の価値は90億ドルに達している。過去1年だけでも、キンダー氏は3億7600万ドルの配当金を受け取った。

 この成功の一因は、米国のエネルギー分野の好況と、キンダー氏の才能にある。だが、キンダー氏がある独特な企業形態を巧みに利用していることも理由の1つだ。

 「マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)」は、法人の有限責任と、パートナーシップの税制上の利点、それに株式非公開企業のガバナンス(企業統治)を兼ね備えた企業形態だ。

 MLPでは、年ごとの利益が出資者にそのまま受け渡されていれば、法人税が課税されない。また、株主の権利もそれほど重視せずに済む。MLPや同様の「パススルー」型の企業形態には、今、資本の大波が押し寄せている。

 そうした企業の総数は、合計しても米国の上場企業の9%を占めるにすぎない。だが2012年には、公開市場で調達された株式資本の28%、ウォール街に支払われる手数料の3分の1を、この種の企業が占めている。同種の非上場法人を含めれば、このような「企業形態」は、新たに生まれる企業の3分の2以上を占める。

 水圧破砕(フラッキング)などの一部の産業は、こうした企業形態と密接に結び付いている。米国の資本主義の様相は、気づかないうちに変化していたのだ。

歪んだ資本主義

 そう聞いても、誰も驚かないだろう。企業には繰り返し新たな負担が課されてきたため、資金のフローが歪んでいるのだ。

 米国ではエンロン破綻をきっかけに企業改革法(サーベンス・オクスリー法)が生まれ、この善意の法律が、米国での株式上場を巡る経済的な計算を一変させた。いまだかつて、金融業界が意に沿わないルールに従ったためしはない。危機以前には、銀行が資産を保有するとコスト高になる規則のせいで、簿外処理による資産隠しが恐ろしいまでに助長された。