4. 国土安全保障法 

 「9.11以前の国土安全保障体制は、パッチワークのようなものだった」。2007年に発行された国土安全保障理事会による、「国土安全保障のための国家戦略」に、盛り込まれた一言である。

 9.11は米国にとって、本土攻撃という衝撃に加えて、国土安全保障の意味合いを再認識させた出来事だったと言える。その「パッチワーク」の現状を変えるべく、制定されたのが、2002年の国土安全保障法だった。

 これは、まさしく新たな立法であり、前述の3段階のイニシアティブのうち、最初の段階に位置づけられるものだ。

 国土安全保障法の中身は、一言で言ってしまえば、それまで「パッチワーク」状態であった国土安全保障に関わる組織や当局、リーダーシップの所在を再編成し、国土安全保障省という新たな省庁を設置し、統一したということに尽きる。

 また、国土安全保障と書くと、テロ対策や防衛政策というようなニュアンスにも聞こえるが、ハリケーンや火災などの自然災害対策ももちろん含まれている。

 この国土安全保障省という存在とその業務が、前述のキング氏による分類の第2段階のイニシアティブと言えるだろう。

 それまでは、大統領に直属していたFEMA(連邦緊急事態管理庁:フィーマと発音し、米国の災害対策について語られる時、よくも悪くも、よく話題に上る)も、国土安全保障省の一部として、再編成された。

 医療の分野においては、保健・福祉省(HHS)の管轄であった災害医療の担当機能やシステムも、その一部が国土安全保障省に移された。移行された分野は主に4つであり、(1)保健・福祉省の危機準備室、(2)国家災害医療システム、(3)都市部医療対応システム、(4)戦略的国家備蓄体制だ。

 また、国土安全保障法とその関連法規は、起こり得る災害や危機に対して、担当当局が効果的に準備をし、実際に危機が発生した時には、効果的に対応できるよう2つの計画や仕組みを推し進めるように指定している。

 国家事態管理システム(National Incident Management System: NIMS/ニムスと発音される)と、国家対応計画(National Response Plan: NRP)と呼ばれる2つだ。

 このシステムと計画が、前述のキング氏による分類の第3段階のイニシアティブに当たる。では、この国家事態管理システムと国家対応計画とは何か。いよいよ具体的な危機対応準備体制の中身について、次回以降に触れていきたい。