(英エコノミスト誌 2013年10月19日号)

厳しい制限付きでイランにウラン濃縮を認める取引は、全く取引がないよりマシだ。

イラン核開発問題、11月に再協議 抜き打ち検査も容認

10月16日、スイス・ジュネーブで2日間の日程で行われたイランの核開発問題を巡る協議終了後の記者会見を終え、車椅子で記者会見場を後にするイランのモハマド・ジャバド・ザリフ外相〔AFPBB News

 イランの核開発計画を巡る10月半ばの交渉に対する順当な反応は、軽い楽観主義だ。突破口は開かれなかったが、協議の雰囲気は、来年何らかの取引が成立するとの期待を抱かせるくらいに良好だった。

 特に、信頼醸成措置から始まり、包括的な取り決めで終わる「ロードマップ」を作成するというイランのモハマド・ジャバド・ザリフ外相の提案は、予想以上に詳細に渡っていた。

 交渉チーム――一方にイラン、他方に国連安保理常任理事国5カ国とドイツがいる――は今、他方が何を望み、超えてはならない一線がどこに引かれているのかを理解している。

 彼らはまた、これが世界で最も危険な論争の1つに対する外交的解決の最後のチャンスかもしれないことも分かっている。問題は、イランが受け入れるような、行うだけの価値がある取引があるかどうかだ。

 イランは「クリティカル・ケイパビリティー」――国際原子力機関(IAEA)の査察官に探知されることなく、少なくとも1個か2個の核兵器に相当する高濃縮ウランを製造できる段階――として知られるところに近づいている(一部の推定では3カ月から9カ月以内とされる)。

 だからと言って、イランの指導者たちが必ず核兵器を保有するという重大な決断を下すわけではないが、極めて短期間で製造できるという事実が西側諸国と特にイスラエルを怖がらせている。

 一方、過去2年間着実に強化されてきた西側の制裁措置は、すでに脆弱なイラン経済に大打撃を与えている。イラン経済は過去1年で約6%縮小し、通貨リアルは2012年1月から50%以上下落している。インフレ率は40%に上り、失業率は30%近い。

 6月の大統領選でハサン・ロウハニ師(最も穏健派の候補)が圧勝したことや、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師がロウハニ大統領に与えたと見られる、取引を成立させよとの指令は、制裁による痛みがもたらした直接的な結果だ。

良い選択肢はない

 だが、双方が今、取引を望んでいるという事実は、合意成立が容易であることを意味するわけではない。

 イランの指導者たちが主張するように同国の核開発計画が完全に平和目的であるならば、ことは簡単だ。だが、たとえイランが核兵器を欲しがっていないとしても、間違いなく核兵器を製造する能力は得ようとしている。数十年に及ぶ努力と犠牲の後では、国の経済見通しがいかに厳しいものであれ、イランがそれを完全に廃棄することはないだろう。