「ICTの新しい役割」

医療、介護、環境、観光、農業・・・
暮らしを「より豊か」にするICT

 インターフェースを支える先進技術のコーナーの次は「ICTの新しい役割」コーナーに向かう。「情報通信」はいつの時代も人間同士のコミュニケーションの媒体となって暮らしの質の向上に貢献してきた。より良い生活のためにICTがどのような役割を果たしてくれるのか、富士通は具体的なケースを挙げながら紹介している。「先進的なICTによって実現される社会的な価値や効果、私たちが受けるメリット」について見ていこう。


医療と介護
~患者の負担を減らす医療と、デジタル機器の活用で深まる親子の絆~

 近年、診療所や病院のネットワーク化が進んでいると言われる。「地域医療」というキーワードも頻繁に耳にするようになった。カルテや検査結果の履歴、投薬の履歴などの診療情報を共有することで、ひとりの患者にとって重複した診療をなくす、この“医療のネットワーク化”によって、私たちは余分な医療費の支払いを減らしたり、通院での負担を軽減したりといった恩恵を受けることができる。これには病院だけでなく介護施設なども当然、含まれる。情報化とネットワーク化によって、地域の医療機関・介護施設が、あたかもひとつのチームになったかのようにして、私たちの健康や日々の暮らしの安全を見守ってくれるのだ。

 そのような「ネットワーク化された地域医療」を実現するのが富士通の「Human Bridge(ヒューマンブリッジ)」だ。システムが人と人、つまり患者や医師の懸け橋となることを目指している。

ヒューマンブリッジのイメージ
 

 さらに富士通が参考出展していたのが、離れて暮らす高齢者と家族をつなぐ『親孝行モデル』だ。「親は地方に、自分は都市部に住んでいて、なかなか様子が分からない」といった悩みを抱えている現役世代は多い。親孝行モデルでは、「コミュニケーター」が親を訪問し様子を確認し仲介するほか、テレビ電話などデジタル機器を使った親子間交流をサポートする。第三者を介することで親の本音やニーズを確認し、生きがいサービスや日常生活の手助けをする民間サービスにつなげるといったことも視野に入っている。今後、民間の得意技とアライアンスを組み、事業展開を計画している。

 団塊の世代が75歳以上を迎える「2025年問題」が迫っている。全国規模で非同居家族の日々の安心や安全を考える富士通の親孝行モデルは、社会全体をより「幸せに満ちたもの」にできるだろう。

「親孝行モデル」のサービスの例


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
観光
~周遊観光を支援し、より柔軟に、深いニーズにも応える~

 観光資源やコンテンツを持つ自治体や観光協会などが、インターネットで自由に地元の魅力を発信できる時代になったと言われる。しかし、車で移動する旅行者が周遊計画を立てる際に、おすすめの観光ポイントをもっと柔軟に紹介できる機能があれば、旅行者は知られていない観光スポットを発見する喜びを感じるだろう。地元にとっても埋もれていた観光資源のアピールになる。

 富士通が開発したルートガイドのサービスは、観光客の旅行ルートのアレンジに貢献しているサービスとして県の内外で有名だ。土地勘のない人でも距離と移動ルートが一目で分かるので、旅行者は安心。地元にとっては沿線のおすすめスポットをアピールできる絶好の機会にもなる。地域で共同利用することで、観光資源の広域な連動も容易になるなど、「地域共同利用型観光クラウド」として機能する。

青森県での観光クラウド。スマートフォンとの連動も。

 「観光クラウド」は今後の展望として、観光以外の分野への展開も期待される。例えば「自治体が持つ地域情報に関するデータ」がオープン化されることで、地域に暮らす人々にとっても利便性のあるサービスの開発につながったり、あるいは災害時の避難関連情報の基盤として利用できたりといった活用も見込めるだろう。

 


農業
~半導体製造工場のノウハウで「おいしい野菜」作り~

 ICT企業の富士通が野菜作り。2014年1月に2000平方メートルもの規模の植物(野菜)工場が会津若松市(福島県)で始動するという。首をひねったが、「半導体工場で培ったノウハウを用いて、低カリウムのレタスを栽培する」と聞き、なるほどと感じた。半導体工場のクリーンルームは、屋内環境を完全にコントロールするノウハウがなければ運用できない。害虫や雑菌の発生を防ぐので無農薬。工場へ供給されるエネルギーは管理されているなど、理想的な栽培環境だ。

 この環境で作られる予定なのが、低カリウムのレタスである。カリウムの摂取量に制限のある透析患者や慢性腎臓病患者の方も生で食べられる野菜。おいしい野菜を食べられる喜びを、富士通の植物工場は実現してくれるだろう。

クリーンルームのノウハウを生かした工場内と水耕栽培で育つレタス。

 

ペット
~データを愛犬の健康管理に役立てる~

 家族の一員であるペットの健康管理やストレスチェックなどは飼い主にとって気がかりなこと。愛犬の首輪に装着して日々の行動を記録する『わんダント』は興味深い製品だ。しかし、ただのペット用歩数計でなく、データをグラフ化して健康状態を管理したり、行動記録を把握したりできる点がユニークだ。

 ほかにも「どうぶつクラウド」では、ペットの健康データを蓄積して予兆の管理に役立てられるほか、動物病院やペットサービス事業者との連携を実現できる。ペットに関するデータを収集・分析する基盤こそ「ペットライフレコード基盤」だ。ペットとの生活がより豊かになる。

センサーを搭載した愛犬専用デバイスと(どうぶつ)クラウドでペットの健康を管理

 

スマートシティ

 ここまでICTが「新しい役割」として、いかにして社会に貢献するかを見てきた。センサーデータや、人が入力する情報をICTの基盤へと取り込み、付加価値の高い「新たな知」を創出する。センサーが生み出す膨大なデータを活用するサービスは今も増え続けている。エネルギーの分野でも賃貸住宅の屋根に設置された太陽光発電設備を使って「仮想発電所」とする福島県での実証実験の模様などがブースにて紹介されていた。