(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)

新しい経済特区は広範な市場改革の起爆剤となる可能性がある。ただし、官僚が手綱を緩めれば、の話だが。

上海に自由貿易試験区、FBやツイッターも利用可能に

「中国(上海)自由貿易試験区」の文字に赤い幕をかける作業員ら〔AFPBB News

 ビジネスマンたちは何週間も、上海自由貿易区(SFTZ)について猛烈に憶測を巡らしていた。この政策は、11月の共産党大会の後に示される予定の大がかりな改革政策に弾みをつけることを意図している。

 その名前に反し、SFTZはむしろ中国の商都・上海の郊外の企業誘致地域のようなものだ。李克強首相が個人的に試験区設置を支持してきた。

 9月29日、ついにSFTZが正式に開設された。指導者たちはこれを、30年以上前の深セン経済特区の創設と同じような重大な局面だと呼んだ。香港の近くに創設された深セン経済特区は、改革と驚異的な成長をもたらした。SFTZ開設の記者会見で、当局者たちは「イノベーション」という言葉を43回も使った。

 威勢のいい言葉にもかかわらず、SFTZの開設は期待外れだった。政府高官はほとんど誰も姿を見せなかった。また、特区のスキームには、期待されていたいくつかの改革が含まれていない。検閲を通さないインターネットへのアクセス、法人税の引き下げ、外国のオークション会社に対する古美術品販売の認可などだ。

 もっと悩ましいのは、詳細が全くと言っていいほど明らかにされていないことだ。北京にある欧州連合(EU)商工会議所の元会頭、ヨルグ・ヴトケ氏は「中身を見せろ!」と叫ぶ。同氏は特区に熱心だったが、今では当局者が臆病になったと心配している。

 当局が外国人が特区内で投資できない分野の「ネガティブリスト(禁止項目一覧)」を発表した時にも、そうした懸念は和らぐどころではなかった。理論上は短いリスト――銃や違法薬物、ポルノを禁止する程度――が投資家に優しい策となる。ところが実際は、SFTZのネガティブリストには、1000以上の禁止区分が設けられている。

 地元の政府関係者は、今後リストは削減されると主張しているが、ある外国人弁護士は中国の役人は単に「管理中毒だ」と不平をこぼしている。このような不確実性を考えると、鳴り物入りのSFTZが本当に次の深センとなり得るのかと問うて当然だろう。ところが、多くの専門家から聞かれる驚くべき答えは、用心深い「なり得る」だ。

辛抱せよ

 「初期段階での警告に惑わされてはならない。我々は今も極めて野心的だ」。SFTZについて政府に助言を与えた上海財経大学の陳波氏はこう話す。陳氏は、国内外の要因が中国の経済モデルに変革を迫っていると考えている。

 国内では、人件費の高騰と労働力の高齢化が中国を「中所得国の罠」に追い込もうとしている。国外では、競合国が環太平洋経済連携協定(TPP)など、各国経済をこじ開ける地域自由貿易協定になだれ込んでいる。「中国は競争力のゲームで腕を上げなければならないというプレッシャーを感じている」と、在上海米国商工会議所のケネス・ジャレット会頭は語る。