マット安川 ゲストに宮崎正弘さんを迎え、米財政悪化の実態、それに伴う世界情勢や雲行きが怪しいTPPなど、詳しくお聞きしました。

米国債のデフォルト危機:楽観的な日本、したたかな中国

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 アメリカの債務上限引き上げの問題で、オバマ(米大統領)さんは共和党に対して、これは飲むからこれを飲めというかなり高飛車で強引なことを言っています。一方の共和党も簡単には譲らない。本当にデフォルトまでオバマさんを追い込むつもりなのかどうなのか、予断を許さない状況です。

 しかし日本の空気はすごく楽天的です。まさかデフォルトにはならないだろうと、みんなが思っている。

 確かにアメリカにも楽観論が出てきました。債務上限を数カ月引き上げる妥協案で、問題を先送りしようというのが今の議会の動きです。それでアメリカの株価が上がったら日本のそれも上がったりしています。

 しかし、中国はといえば対照的にしたたかです。彼らは日本よりも60億~70億ドルほど多い一兆二千数百億ドルの米国債を保有しています。

 ひとつ注目すべきは債券の種類です。日本が保有しているのはもっぱら5年、10年というスパンの長いものなのに対して、中国は長くても6カ月くらいの短期債ばかりで、しかも絶えず買い替えをしている。これは政治的武器に使おうという思惑があるのと、短期債のほうが利息を稼げるからです。

 中国の財務次官は記者会見で、われわれは真剣にアメリカの国債市場を注視している、仮にデフォルトしたらわれわれの持っている債券については補償してくれと、発言をしています。

 なんとも身勝手な言い草ではありますが、ちゃんと万一のシナリオを想定している。日本はちょっとのんきに構えすぎではないかと思います。

アメリカの衰退を見越して国防力を強化すべし

 アフガニスタンからはすごすごと逃げ出し、シリアには結局手も足も出せなかったアメリカ。この国が今後さらに衰退していくのは間違いありません。

 オバマさんは向こう5年間で1兆ドルの国防費を削減すると言っています。中国が防衛力でアメリカを追い越す事態を防ぐためにどうすべきか、日本はそろそろ真剣に考えないといけません。

 尖閣で何事かが起きたときにアメリカが本当に来てくれるのかどうかも、疑問視せざるをえない現状なのですから。

 給料の10%ずつを緊急に貯金するなどして、国民総意の下にキャンペーンでもやれば戦前のように防衛力を倍増できるかもしれません。しかし、それでは間に合わないし、今から核開発を始めても同じことです。