週刊NY生活 2013年9月21日459号

 テレビ、映画、ビデオゲームなど、あらゆるメディアで流れる音楽。その音楽を使いたい人と、版権を持つ人や弁護士との間に立って交渉するのが竹島正剛さんの仕事だ。

 「どのケースも決まった数字はなく、すべて経験と独自のカン」と、15年のキャリアと誠実さを武器に、版権交渉のプロフェッショナルとして活躍する。

竹島正剛さん

 竹島さんが版権部の部長として働くイギリス系音楽出版社は、米国とカナダの4万~5万曲ほどの版権を管理している。

 日本音楽著作権協会が多くの音楽を管理する日本の状況と違い、米国ではレコード会社や音楽出版社が版権を直接扱う自由があることから、竹島さんのような人材が必要とされる。

 映画なら、映画館だけの上映なのかDVDにも使用するのかによって金額が異なり、売却という形になることもある。コマーシャルの場合は、その製品に音楽が結びつくのを嫌がる作詞・作曲家やミュージシャンも多いので、期間限定という交渉になることも多い。

 ミュージシャンの遺族が版権を持つ古い曲は、交渉が難航することもある。日系企業のビデオゲームへの許諾は5年を費やした。

 弁護士とのやりとりはとくに神経を使う。人間のエゴが出たり、板挟みになることも多いが、「みんなをハッピーにする仕事」と言い、映画やコマーシャルを観て「ああ、これライセンスした」と喜びを感じる。

 中学生の頃からロックに夢中になった竹島さんは、海外演奏を夢見て京都産業大学英米文学科に進学、テネシー州に語学留学するも、日本人とつきあってばかりで英語が上達しなかった。

 この大後悔をバネに、そして音楽を仕事にしたいと考え、卒業後に再びペンシルバニア州のマンズフィールド大学に留学、英語漬けの生活を自らに課した。クラッシックギターで音楽学士号を取得、音楽ビジネスも専攻して、インターン時代に版権を扱う仕事に出会った。

 日本語をほとんど使わない日々を送り、米国人カリーンさんと今月入籍して、米国社会に根づいて暮らすが、米国生活にこだわってはいない。独立も視野にあり、奈良の旧家の長男としては将来は帰国して先祖代々の田んぼを守らなければという意識もある。

 どこか古き良き日本人の雰囲気が漂うのを、「トム・ウェイツのサンディエゴ・セレナーデという歌のなかに、I never saw the east coast 'til I moved to the west っていうラインがあるんですが、まさにそんな感じですかね」と説明する無類の音楽好きだ。

(小味かおる、写真も)

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