(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)

アルゼンチン国民は突然、大統領の将来、そして国の将来について心配する理由ができた。

アルゼンチン大統領の血腫除去手術が成功、政府発表

クリスティナ・フェルナンデス大統領の突然の入院にアルゼンチン国民は驚いた〔AFPBB News

 大統領が突然入院したというニュースは、どんな国でも疑問を呼ぶだろう。本当のところ、病状はどれくらい深刻なのか? 回復までどのくらい時間がかかるのか? そして何より、もし指導者の健康状態が悪化したらどうするのか?

 アルゼンチンでは特にこうした懸念が強い。クリスティナ・フェルナンデス大統領は就任後6年間で、極めて個人色が強く、多くの場合あくどい統治スタイルを確立しているうえ、10月8日には大統領が脳の近くにできた血の塊を除去する緊急手術を受けたからだ。

 物語が始まったのは10月5日、フェルナンデス大統領が不整脈と頭痛を訴えて入院した時のことだ。検査の結果、以前負ったと見られる怪我が原因で出血していることが明らかになった。

国民に知らされていなかった大統領の入院

 過去の事故は何も公表されていなかったことから、大統領報道官のアルフレード・スコッチマルロ氏が平然と、大統領が8月にも入院していたと述べると、アルゼンチン国民は驚いた。大統領はどうやら、出身母体である「勝利のための戦線(FPV)」が全国予備選挙(間近に迫った議会中間選挙の前に行われる予備選挙)で惨敗を喫した翌日、転んで頭を打ったらしい。

 10月7日、フェルナンデス大統領は再び、病院に呼び戻された。先に休養を勧めていた医師団が手術することにしたからだ。10月8日に手術が行われ、大統領は現在、快方に向かっていると言われている。

 しかし、大統領が検査結果をすべて公表しないよう医師団に指示したことから、正確な健康状態は不明だ。そして、大統領の将来を巡る疑問は今なお深刻だ。

 まず、フェルナンデス大統領がどのくらい職務から離れることになるか分からない。少なくとも10月27日の中間選挙は逃す公算が大きい。大統領は手術の前までは、自党の候補者を応援するために、ローマ法王フランシスコとの写真撮影の機会を設けるなど、いつも通り熱心に選挙運動を行っていた。

 だが、8月の予備選挙の結果と最近の世論調査を見る限り、FPVは政党として存続してきた10年間で最悪の結果に終わりそうだ。何しろ、同党は高いインフレとその他の経済問題で信用を失っている。

 10月半ばの出来事が選挙結果にどのような影響を与えるかも定かではない。これまでフェルナンデス大統領は、自身の弱みを利用して政治的な優位性を得てきた。前任者であり夫のネストル・キルチネル氏が2010年に死亡すると、彼女の支持率は急上昇した。翌年には、そうした溢れんばかりの同情を大量の票に変え、再選をかけた選挙で54%という前代未聞の得票率を獲得した。