(英エコノミスト誌 2013年10月12日号)

各国政府がグローバル化に対する障壁を築いている。今こそ、新たな自由化の波を起こすべき時だ。

 一発で効く世界経済の特効薬が見つかったと想像してみてほしい。企業が息を吹き返し、売り上げと生産性が向上する。融資を受けやすくなる。店に並ぶ商品の種類が増え、品質も上がるが、価格は安いままだ。経済にどんな栄養ドリンクを注入したら、そのすべてを実現できるだろうか?

 その答えは、グローバル化だ。だが最近では、自由化に向かって進んできたこれまでの傾向に代わり、障壁を築くことに力が注がれるようになっている。それは大抵の場合、世界の不利益につながる。

最悪の事態には至らなかったが・・・

 資本と財(商品)と人間の国境を越えた移動が、技術と経済自由化という両輪を原動力として拡大し続けると信じられていたのは、それほど昔のことではない。だが、2008年に世界金融危機が勃発すると、その過剰な自信が、1930年代の再来という懸念に取って代わられた。

 その懸念が現実のものにならなかったのは、少なくとも部分的には、世界が1930年代の過酷な経験から、保護貿易主義はひどい事態を一層悪化させるという教訓を学んでいたためだ。

 だが、微妙な変化はあった。無制限のグローバル化ではなく、より選択的なあり方に変化したのだ。本誌(英エコノミスト)の特集でも触れているように、政策立案者たちは、貿易の相手、国外の投資家や銀行に与える権利の範囲、認可する資本の種類について、選別を強めている。外界を完全に閉め出す壁を築いたわけではないが、いわば門を設置しつつあるのだ。

 その動きが最も顕著なのが、資本市場だ。2007年には11兆ドルあった世界の資本移動は、2012年にはその3分の1に減少した。この減少の一部は景気循環によるものだが、銀行の対外投融資が災厄を招いたと考える米国や欧州の規制当局が、自国の金融システムを囲い込もうとしたことも一因だ。

 新興国では、資本規制がある程度認められるようになった。ブラジルなどの国では、国内経済を不安定にするホットマネーの流入から自国を隔離するのに役立ったからだ。

 資本規制は、慎重に活用すれば、危機の伝染に対する金融システムの脆弱性を緩和し、損害を小さくすることができる。だが、各国政府は、金融の自由化により得られるメリットを忘れてはならない。国内の銀行は、国外の銀行との競争にさらされることで競争力が磨かれる。銀行を囲い込み、資本を規制すれば、外からの危機の伝染は防げるが、貯蓄を、使い道がほとんどない国の中に閉じ込めてしまう。

 資本規制は場合によっては正当化できるが、保護貿易主義に正当化の余地はない。幸い、貿易の監視を担う世界貿易機関(WTO)は、あからさまな保護貿易主義を阻んでいる。だが、各国政府は、WTOの怒りをかわす狡猾な方法を編み出した。