(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)

安倍晋三首相が賛否両論を呼んだ消費税の引き上げを決意した。しかし、首相はさらに大胆になる必要がある。 

消費税8%、安倍首相が正式表明

10月1日、政府官邸での記者会見に臨む安倍晋三首相〔AFPBB News

 安倍晋三首相は10月1日、2014年4月に消費税を5%から8%に引き上げると発表した。これは、民主党の野田佳彦前首相が下した決断の第1段階を実行に移したに過ぎなかった。この決断も一因となり、野田前首相は政権の座を明け渡すことになった。

 前回消費税が引き上げられた1997年には、税率が上がると、日本経済は急激に傾いて景気後退に陥り、当時の首相(安倍首相と同じ自民党出身)もすぐに辞任に追い込まれた。

 それでも今月、安倍首相に選択肢はなかった。政界の既成勢力は増税を認めており、この厳しい決断を回避していたら、首相自身の資質が問われかねなかった。

 日本の公的債務残高は、国内総生産(GDP)の約245%に迫っている。日本もいずれギリシャのように破綻への道を歩みかねないと思っている国内外の人々にとって、年間7兆5000億円の歳入増は、小さいながらも重要な第一歩だ。しかも安倍首相は2歩目を踏み出し、2015年に消費税を10%に引き上げる可能性が高い。

何としてでも成功させなければならないアベノミクス

 消費税は、2012年12月の総選挙大勝を受けて安倍首相が政権の座に就いて以来、国内問題では初となる大きな試練だ。消費増税は、後に有権者からしっぺ返しを受けるリスクをはらんでいる。そうした事態を回避するには、3本の矢からなる経済再生戦略「アベノミクス」が機能しなければならない。

 日銀は4月、大胆な金融緩和によってデフレを終わらせる「衝撃と畏怖」作戦を開始した。金融緩和は、多額の財政刺激策を伴った。一方で、今後数週間以内に構造改革の全容が明かされることになっている。

 懸念されているのは、1997年のように、増税によって経済の回復が中途で止まってしまうことだ。家計は既に圧迫されている。円安によって物価が上昇している一方で、今のところ賃金は上がっていない。それでも安倍首相は1日、経済の再生と財政健全化を同時に推し進めるほかに道はないと断言した。これこそが「国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかりと引き渡す」唯一の方法だと、安倍首相は述べている。

 安倍首相の発言が奇妙なまでにとりとめのないものではなく、これほど責任感あるものに聞こえるのは稀なことだ。