(英エコノミスト誌 2013年10月5日号)

自由の国が、統治不能に陥りかけているように見える。もうたくさんだ。

米政府機関の一部閉鎖、情報機関の活動に「損害」 国家情報長官

暫定予算が成立せず、政府機関の一部が閉鎖された〔AFPBB News

 9月30日深夜、米国議会では、目前に迫った連邦政府機関の閉鎖について、誰もがほかの誰かを責めていた。どうなるのかと事態を見守っていた世界にとっては、非難の応酬は的外れだった。崖っぷちで揉めている時にまず問うべきなのは、「誰が正しいのか?」ではなく、「一体こんな崖っぷちで何をしているのか?」であるはずだ。

 政府機関の閉鎖自体は、困ったことではあるが、耐えられないものではない。治安関連の業務は継続されるし、年金も通常通り支払われる。国際宇宙ステーションの宇宙飛行士が呼吸できなくなることもない。

 280万人の連邦職員のうち、必要不可欠ではない業務についているおよそ80万人が自宅待機となり、さらに130万人が無給での勤務を求められている。暫定予算が成立し、資金の流れが回復するまでの間、不要不急の業務は休止されることになる。

 予算がすぐに成立すれば、経済的なダメージはそれほど大きくならないはずだ。恐らく、閉鎖1週間につき第4四半期の経済成長率が0.1~0.2%下振れする程度だろう。

 問題は、今回の閉鎖がもっと根深い問題の症状だということだ。すなわち、連邦議会が極端に二極化するあまり、麻痺状態に陥っていることだ。しかも、民主党と共和党が10月17日までに溝を埋められなければ、最悪の事態が訪れることになる。

 予算を巡る争いは、珍しいことではない。実際、連邦議会は1997年以降、正式な予算を期限内に1度も可決していない。だが、今回の争いは、新しい事態を表している。下院を支配する共和党が予算の成立を阻止しているのは、予算の内容に反対しているからではなく、全く別の争点に反対しているからだ。つまり、10月1日に主要部分の運用が開始された、バラク・オバマ大統領の医療保険改革(オバマケア)である。

 共和党の当初の要求は、オバマケアの財源をすべて奪い取ることだった。言い変えれば、自党出身の大統領の最大の成果をつぶすことを民主党に同意させようとしていたわけだ。民主党が同意するはずがない。

 予算成立の期限が迫ると、共和党は要求を後退させた。オバマケアの財源を奪う代わりに、オバマケアによる医療保険加入の義務づけ条項(加入しなければ罰金が科せられる)の1年延期を求める戦術に転じたのだ。

予算の瀬戸際交渉がもたらす破滅

 その戦術は比較的穏当なように思えるが、2つの理由から、穏当とは言えない。

 第1の理由は、保険加入の義務づけを延期すれば、医療保険改革全体が破綻する恐れがあることだ。オバマケアは2本の柱に支えられている。1本目の柱は、全国民に対する保険加入の義務づけ。そして2本目の柱は、病歴を理由にした保険料の差別化を保険会社に対して禁じることだ。