(英エコノミスト誌 2013年9月28日号)

停滞する経済、膨れ上がった国家、そして大規模な抗議行動は、ジルマ・ルセフ大統領が針路を変えねばならないことを意味している。

ブラジル抗議デモ、収束の気配なし 国民の7割以上が支持

リオデジャネイロのコルコバードの丘に立つキリスト像〔AFPBB News

 本誌(英エコノミスト)は4年前、「ブラジルが離陸する」という見出しを掲げ、コルコバードのキリスト像がリオデジャネイロのコルコバードの丘からロケットのように飛び立つ絵を表紙に掲載した。

 1990年代半ばにフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ大統領の下で安定したブラジル経済は、2000年代前半にルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領の下で一気に加速した。

 ブラジル経済は2008年のリーマン破綻後もほとんど傾かず、2010年には7.5%成長して4半世紀ぶりの高成長を記録した。そんなマジックに加え、ブラジルは来年のサッカー・ワールドカップと2016年の夏季オリンピックの両方の開催を勝ち取った。

 こうした強みを追い風に、ルラ氏は2010年、同氏の庇護を受けた実務家のジルマ・ルセフ氏を大統領に選出するよう有権者を説得した。

 それ以来、ブラジルはドスンと音を立てて地上に落ちてしまった。2012年の経済成長率は0.9%だった。6月には何十万人もの市民が街に繰り出して今世代で最大規模のデモを行い、高い生活費やお粗末な公共サービス、政治家の強欲と腐敗への不満を訴えた。

 国民の多くは今、ブラジルが軌道に乗りつつあるという見方に不信感を抱き、今回もまた、彼らが「voo de galinha(鶏の飛行)」と呼ぶ短命な急成長だったと判断している。

 成長の減速については弁解の余地もある。何しろ、すべての新興国が減速した。先のブラジルの好景気の原動力の一部――急性インフレを終わらせ、国を貿易に開放したことの成果やコモディティー(商品)価格の上昇、融資と消費の大幅拡大など――は尽きてしまった。

 また、ルラ氏の政策の多く、特に2500万人の国民を貧困から救った「ボルサファミリア」は賞賛に値するものだった

世界で最も厄介な税法

 だが、ブラジルは好況期に政府を改革する努力が全く足りなかった。それはブラジルに限ったことではない。インドにも同じようなチャンスがあり、やはりその機会を逃した。

 しかし、本誌の特集が説明している通り、ブラジルの公的部門は民間部門に特に大きな負担を課している。企業は世界一厄介な税法に直面し、給与税が給与支払額を58%も膨らませており、政府は歳出の優先順位を履き違えている。

 年金とインフラを比較してみるといい。前者の年金は呆れるほど手厚い。平均的なブラジル人は、54歳で退職して最終給与の70%を年金として受給することを期待できる。若者が多い国であるにもかかわらず、ブラジルが年金に費やす費用の国内総生産(GDP)比は、高齢者の割合がブラジルの3倍に上る南欧諸国と同等だ。