(英エコノミスト誌 2013年9月28日号)

見事な勝利を収めた後、アンゲラ・メルケル氏は政権の連立パートナーを選ばなければならない。緑の党に目を向けるべきだ。

ドイツ総選挙で保守与党が大勝 メルケル首相、歴史的3選へ

アンゲラ・メルケル首相は9月22日の選挙で歴史的な勝利を収めた〔AFPBB News

 5年前に金融危機が勃発して以来、欧州の大半の大国――英国、フランス、イタリア、スペイン――では、指導者が有権者にあっさり捨てられてきた。

 しかし、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は9月22日に地滑り的な勝利を収め、同氏の率いるキリスト教民主同盟(CDU)の得票率は1990年の東西ドイツ統一以降最高を記録した。

 政権を取ってから8年も経った後、これほど難しい時期にこれほど見事な勝利を収めたことで、メルケル氏はドイツのみならず欧州全体にとっても、誰もが認める指導者になった。

 だが、連立相手だった自由民主党(FDP)が1949年以来初めて、ドイツ連邦議会(下院)での議席確保に必要な5%の得票率に届かなかったために、メルケル氏の勝利は色あせてしまった。これは残念なことだ。というのも、FDPはドイツ政界で唯一、自由市場、サプライサイドの改革、減税など、本誌(英エコノミスト誌)が好む経済自由主義を支持する政党だったからだ。

 悲しいかな、外相のギド・ヴェスターヴェレ氏や経済相のフィリップ・レスラー氏を含むFDPの指導者は、政権で力を発揮できなかった。FDPが新しい体制の下で、もっと説得力のある自由主義の提唱者として立て直しを図ることが期待される。

SPDとの大連立が望まれているが・・・

 CDUが絶対多数を確保できなかったため、メルケル氏は2つの中道左派政党のどちらかを新たな連立パートナーに選ばなければならない。連立協議は何週間も続き、ドイツの新たな推進力を切望する欧州の人々を苛立たせる可能性がある。

 2005年の首相就任時と同様、メルケル氏が最初に選ぶのは、社会民主党(SPD)との大連立だ。この大連立は、有権者と、CDUの大半が望んでいるものだ。中道左派は既にドイツ連邦参議院(上院)で多数を占めているため、大連立となれば、強力な政府が誕生することになる。

 だが、SPDはメルケル氏には以前ひどい目に遭わされたと思っている。2009年、メルケル氏と連立を組んで4年経った後の選挙で、SPDの得票率は戦後最低を記録したからだ。

 再びメルケル氏と組む場合、SPDが求める対価は大きい。メルケル氏は、高い最低賃金、富裕層に対する新税導入、大半の改革の却下など、SPDが掲げる政策の中でも特にひどいものも飲まねばならないだろう。

 SPDの一部議員は、連立協議から離脱し、緑の党と極左政党と一緒に「赤・赤・緑*1」連合を組む衝動に駆られるかもしれない。

*1=ドイツでは一般に政党カラーで連立・連合が示される。赤・赤・緑は、社会民主党(SPD)と左翼党、緑の党の連合を指す