(英エコノミスト誌 2013年9月21日号)

1人の経済学者が社会的流動性の未来について挑発的な疑問を投げかけている。

 米国はアメリカンドリームの終焉に耐えられるだろうか? そんな考えは想像もできない、と右派、左派双方の政治指導者は言う。だが、アメリカンドリームの終焉は、経済学者タイラー・コーエン氏の斬新な新書『Average is Over(平均は終わった)』の中で予想されていることだ。

 コーエン氏は論争には慣れている。2011年には『The Great Stagnation(邦題:大停滞)』でワシントンを刺激した。同著では、米国は無償の土地、豊富な労働力、新規技術という収穫しやすい果実を使い尽くしたと論じた。

 新著では、オートメーションとどんどん安価になるコンピューター処理能力の破壊効果はまだ出始めたばかりだと示唆している。

『大停滞』の著者が描く米国の未来

 コーエン氏の新著は、月並みな仕事と幅広い繁栄が大方失われた未来を描いている。米国人の上位10~15%のエリートは、未来の技術を習得し、そこから利益を引き出す頭脳と自制心を持つ、と同氏は推測する。

 エリート層は莫大な富と刺激的な生活を楽しむ。一方、それ以外の人たちは、雇用主が従業員の生産活動を「過酷な厳密さ」で測定するため、賃金の伸び悩み、あるいは減少に耐え忍ぶことになる。

 中には、富裕層へのサービス提供者として成功する人もいる。少数の者は、努力してエリートの仲間入りを果たし(安価なオンライン教育は格差を平準化する偉大な装置になる)、「超実力主義」が機能しているという考えを裏付ける。これが「取り残された人たちを無視することを容易にするだろう」とコーエン氏は言う。

 同氏のビジョンは、心温まるものではない。コーエン氏が描く未来では、過ちや平凡さでさえ隠すのが難しくなる。例えば、いよいよ数が増える格付け評価が、可もなく不可もない医師や、薬を飲まないか、また別の形で厄介な問題を引き起こしそうな患者を露呈させるだろう。

 若者は、筋肉よりも緻密さに報いる労働市場で悪戦苦闘する。所得が圧迫されるため、多くの米国人は、物価などが安くて、日差しの強い広大な準郊外に向かい、農産物直売所や自転車専用道路で胸焼けしそうになる。多くの人は、安い税金と引き換えにひどい公共サービスを受け入れる。

 これは多少悲惨に聞こえるかもしれないが、現実世界の傾向を反映している。雇用主の60%は既に就職希望者の信用度をチェックしているし、若い男性の失業率は高く、移住者は何年も前から、税金が安く、サービスの質が低いテキサスに流入している。