(英エコノミスト誌 2013年9月7日号)

2008年9月の大混乱の渦から5年経った今、世界の金融は当時よりも安全になっている。しかし、十分に安全とは言い難い。

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米リーマン・ブラザーズが破綻してから丸5年経った今、世界の金融は・・・〔AFPBB News

 2008年、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻すると、ひどい信用収縮が過去80年間で最悪の金融危機に発展した。

 各国の政府と中央銀行が大規模な救済策を実施し、大恐慌の再来は辛うじて免れた。しかし、深刻な景気後退は回避できず、多くの先進国がいまだ完全には立ち直っていない。

 あの惨事から5年経った今、2つの大きな疑問に答えが求められている。世界の金融は当時より安全になったのだろうか? そして、今後さらなる危機が待ち受けているのだろうか?

 手短かに言えば、どちらの答えもイエスだ。国際金融はかつてほど脆弱でないように見える。金融業界が改革のおかげで回復力を高めたためでもあり、また、リーマン・ショックの中心にいた米国が、過剰債務の大部分を処理し、経済面での様々な不均衡を改善したためでもある。

 現在、危険地帯は別のところにある。それらの地域が2008年のような規模の金融崩壊を生む可能性は低いものの、経済成長に打撃を与えるほどの混乱をもたらす危険はある。

金融危機の3つの前兆

 本誌(英エコノミスト)連載の「スクールズ・ブリーフス」シリーズ第1回でも述べたように、2008年9月の惨事にはいくつもの原因があった。だが、大ざっぱに言えば、リーマン・ブラザーズの破綻が惨事を招いたのは、3つの脆弱性が重なったためだった。

 1つ目は、住宅バブルに起因する金融部門を中心とした債務の急増だ。2つ目の脆弱性、すなわち、複雑な証券化の仕組みのせいで、どの資産に価値があり、誰が何を保有しているのかが誰にも分からなくなっていたことにより、住宅バブルの崩壊は危険度を増した。リーマン・ブラザーズ破綻に伴う3つ目の壊滅的な問題は、金融が行き詰まった時に、政府は介入できるか、あるいは介入するかを巡って混乱が起きたことだ。

 将来の惨事の徴候に気付くためには、債務の急増、相互のつながりの理解不足、セーフティーネット(安全網)の不確実性というこの3つの脆弱性がどの程度前回に近いかが、大ざっぱな指標になる。

 最初の2つの脆弱性に関しては、2008年以降、金融規制の見直しで大きく改善した。バーゼル合意に基づく自己資本比率規制により、銀行は、資産に対して保有する資本を量、質ともに上げなければならなくなった。「システミック」な巨大銀行に対しては、より厳しい規制が課せられた。