ハマる人が続出中、「再現レシピ」の不思議な魔力

忘れられないあの一皿が現実のものに

2013.09.06(Fri) 麻生 千明
筆者プロフィール&コラム概要

ヒット作となった「ONE PIECE」レシピ本

 実はこの再現レシピ、ファンが楽しむだけでなく、アニメ制作サイドにとっても非常に“おいしい”レシピと言えそうだ。

 アニメや漫画に登場する料理やお菓子を販売したりレシピを書籍化したりすること自体は珍しいことではない。コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、何かしらの漫画やアニメとの「コラボ商品」を目にするし、書籍も豊富だ。

 例えば大人にも幅広い人気を得ている漫画「ONE PIECE」に登場するレシピをまとめた『ONE PIECE PIRATE RECIPES 海の一流料理人 サンジの満腹ごはん』(集英社)は、発売始めの週で約3万8000部を売り上げた。

 NHK教育テレビで放映中の番組「グレーテルのかまど」は、アニメや漫画だけでなく小説に登場したお菓子、さらには作者が思い入れのあるお菓子なども登場する番組。スタジオで調理の様子を視聴者に見せる他に、作品の中でそのお菓子がどのように登場したのか、どのような意味を帯びているのかを紹介している。しかもデータ放送と連動し、番組中に気になればすぐに詳細やレシピを確認することができる。番組ホームページでは2011年の開始から現在まで80種類以上のレシピがアーカイブされている。

ファンの熱意が支えに

 再現レシピが、普通のコラボ商品や多面的番組よりもアニメ制作サイドにとって“おいしい”要素は、主に2つある。

 まず、再現レシピが「ファンの熱意によって支えられている」点だ。レシピ考案者が料理研究家ではないため、取り組みやすいレシピが多い。そして一度レシピを作ると、これまでは自分の中の想像で終わっていた料理が嗅覚、聴覚、味覚で鮮やかに彩られ、五感の中に刻まれる。中には「作品を見ながら食べたい」とDVDに手を伸ばす人もいるだろう。

 2つ目は公開が主にウェブで行われることだ。YouTubeやニコニコ動画、ブログといった誰の目にも触れやすい媒体で行われるので、話題になれば一瞬で拡散する。そして拡散してしまえば、次々と別のファンからの「私も作ってみました!」というリポートが投稿され盛り上がっていく。ファンは自分で見つけたレシピを「知識」として他のファンに広めたいのではなく、レシピにまつわる感動や思い出を他の誰かと共有したいのだ。

 これらの結果として、作品そのものが放送当時の世代を超え、多くの人の目に触れる機会を得る。しかもファンが自発的に行っているので企業から売り出される場合に避けて通れない制作費や宣伝広告費はゼロである。

 作品内の1つの食事。それだけで費用と手間をかけずに多くの人の目に触れさせることができる。再現レシピは制作サイドから見ても非常においしいレシピではないだろうか。

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