(2010年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
評論家はワールドカップから地政学的な教訓を引き出そうとするが・・・〔AFPBB News〕
国際政治の評論家であれば当然、サッカー・ワールドカップ(W杯)からありふれた地政学的な教訓を引き出す誘惑に駆られるだろう。今大会でフランスとイタリアが予想外の早期敗退を喫したことは、欧州の衰退を示す訓話だと考える人がいる。
スペインの主要紙エル・パイスの解説者は、この週末にイングランドがドイツに破れたのは、イングランドの労働者階級の士気をくじいたサッチャリズムの影響の表れだと論じた(筆者はこの時、動きの鈍いセンターバックと認められなかったゴールが敗因だと思っていたのだが・・・)。
実際、サッカー国際大会の良さは、その勢力図が政治や経済のトレンドをたどらないところにある。W杯はむしろ、独自の世界秩序を持った並行宇宙のようなものを提供しているのだ。
現実の世界とは大きく異なるサッカー惑星の勢力図
ここではブラジルが「唯一の超大国」だ。W杯で2度以上優勝した国から成る安全保障理事会には、アルゼンチン、ドイツ、イタリア、ウルグアイが名を連ねる。米国は中程度の強国であり、フェアプレーの精神で大いに尊敬を集めている。日本は衰退するどころか、躍進を遂げている。
中国とインド(現実の世界では強国として台頭する国)はW杯今大会に出場する資格を得られなかったため、その姿さえ見当たらない。サッカーという惑星では、台頭する強国は概して、26日に米国チームを下して敗退させたガーナの「ブラック・スターズ」などのアフリカ勢だ。
この世界ではブラジルが唯一の超大国。サポーターたちは敵対するのではなく、お祭り気分で盛り上がる〔AFPBB News〕
W杯は明らかに、愛国心を表し、対立を実践する安全な方法を提供してくれる。イングランドとドイツの対戦は、ここであえて詳述するまでもない理由から、特に激しい熱がこもる。
しかし、それでも「真剣なスポーツとは銃撃戦のない戦争である」というジョージ・オーウェルの使い古された警句は、最も重要なポイントを見逃している。
W杯今大会(そして過去3回の大会)に訪れた観客の1人として、ここではオーウェルの言葉よりずっと健全で、人を元気づける何かが起きていることを筆者は知っている。
W杯の雰囲気は敵意ではなく歓喜に満ちており、戦争よりもお祭りに近い。対戦するチームのファンは、派手な衣装をまとって会場に集まり、陽気にポーズを取って写真を撮り合う。
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