(英エコノミスト誌 2013年8月31日号)

安倍晋三首相は、正当に評価されていない日本の起業家たちに希望をもたらそうとしている。

 「これから、はじまる」。2013年春に刑務所から仮釈放されたライブドアの元社長、堀江貴文氏は、その2カ月後にこうツイートした。堀江氏は現在、宇宙旅行のベンチャーをはじめとする30以上の新興企業にかかわっている。もし1社でも大企業に成長すれば、2011年に証券取引法違反などで有罪判決を受けた堀江氏は、日本でも一度転落した起業家が復活できるという証しになるかもしれない。

 実業界の大物を目指す人たちは今、10年ほど前にドットコムバブルが弾けて以降、最も活気のあるムードに包まれている。株価の上昇のおかげで、新規株式公開(IPO)が成功する可能性はぐっと高まっている。安倍晋三首相は、起業家を単なる強欲な勝負師ではなく、それ以上の存在として扱う日本で初めてのリーダーだ。

 押しが強く自己アピールが得意な堀江氏は、この数年、起業家は強欲な勝負師だとの見方を裏付ける象徴的な存在と見なされてきた。しかし今、堀江氏は、実業界に自分が再び迎え入れられようとしていると語る。

起業を妨げてきた文化や制度の打破へ

アベノミクスは「唯一の道」、首相がAFP独占インタビューで語る

安倍晋三首相は、何より日本は最初の失敗に寛容にならなければならないと考えている〔AFPBB News

 「アベノミクス」と呼ばれる3本立ての経済再生政策は、大企業だけでなく新興企業の支援も織り込む。まず、日銀による金融緩和、次に景気刺激策が実施された。3番目は、長期的成長率を押し上げる一連の改革で、全国各地の「経済特区」の新設や、抜本的な規制緩和などが含まれる。

 この公約が果たされれば、医療から農業に至る様々な産業で、起業家に門戸が開かれるだろう。起業家が融資を申し込む際、銀行に過度な負担の個人保証を要求させないようにすることも、改革の一部だ。

 何より、日本は最初の失敗にもっと寛容にならなければならないと、安倍首相は認めている。安倍首相自身、首相として悲惨な第1期を経験し、返り咲きを果たした人物だ。報道によれば、安倍首相は2013年夏、自宅に客を招いた際、若きウォルト・ディズニーが成功をつかむまでに5度も事業に失敗した話をしたという。

 安倍首相は、「新経済連盟」の会合にも顔を出し、IT起業家たちを喜ばせた。新経済連盟の代表を務めるのはインターネットサービス大手、楽天を創業した三木谷浩史氏で、同氏は規制緩和に関する政府のアドバイザーでもある。

 今のところ、日本は起業家にとって厳しい状況にある。企業の総数が減っているうえ、既存企業に対する新興企業の割合は米国や英国の半分以下だ。世界の大学グループが実施する調査プロジェクト、グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の2012年の結果によると、日本の起業家の活動は調査対象となった24の先進国中、最下位タイだった。