総務省の「科学技術研究調査」によれば、2011年度の日本の官民合わせた研究開発費は17兆3791億円で、日本のGDPの3.67%に相当するという。この割合はG8と中国及び韓国を合わせた10カ国中、韓国(3.74%)に次ぐ2位となる。以下、3位米国(2.90%)、4位ドイツ(2.82%)と続く。

 また研究開発費のうち、約8割(14兆円)を企業が負担しているという。日本半導体および電機産業は大崩壊したが、研究開発費から見れば、日本企業全体では頑張っていると言えよう。

 ところが問題は、巨額の研究開発費を投じている割には、日本にイノベーションが起きないことにある。

 この原因追求のために私は、経済産業省の調査結果「平成18年度産業技術調査『企業の研究開発関連の実態調査事業』」を分析した。その結果、企業が研究開発テーマを決める際に、ほとんど市場調査やマーケティングを行っていないことが、イノベーションが起きない原因であることを明らかにした(詳細は2013年8月29日配信のメルマガ「内側から見た『半導体村』」のTopics 1に記載したので、そちらをご参照ください)。

 そのさわりを少しだけ述べると、日本企業にはマーケティング専門部署がない → まともなマーケティングができない → 世界市場のニーズを把握できない → ピント外れな製品開発をしてしまう → 事業化できない研究開発が6割を超える → 日本で年間8.4兆円の研究開発費が無駄に消えていく → そして日本にイノベーションが創出されない、という悪循環が起きている。

東芝の研究開発費と設備投資に違和感

 以上の話は日本企業全体についてであるが、半導体だけに限定すると、どのようなことになっているのだろうか?

 日本半導体の中で、まともに海外と戦うことができているのは、東芝のNANDフラッシュメモリ(以下NAND)とソニーのイメージセンサくらいしかない。その東芝は、米サンディスクと共同で4000億円を設備投資し、NANDの新工場を建設すると発表した(8月6日の日本経済新聞)。