マット安川 元空将の織田邦男さんを迎え、自衛隊の置かれている現況を伺うとともに、外交政策やそれを報じるメディアの悲惨な実態まで、幅広くお聞きしました。

教育は強制から始まる。日本人のDNAを開花させる自衛隊教育

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:織田邦男/前田せいめい撮影織田 邦男(おりた・くにお)氏
元・空将。1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職。(撮影:前田せいめい、以下同)

織田 米軍の司令官に食事に招かれたとき、自衛隊には軍法会議がないという話をしたら、そこにいたみんなにびっくりされました。なのにどうしてこんなに志気が高く、不祥事もなく、仕事をきちっとし、だれ一人逃げ出さないのか、と。

 実際、自衛隊の規律正しさは、世界の軍隊の中でも最高水準です。自衛官の犯罪率を見ても、犯罪白書の数字の10分の1から15分の1ですしね。

 私はその理由を自衛隊の教育がいいからだと思っています。そもそも特殊な人が入る組織だからだと言う人がいますが、それは誤解です。

 日本人のDNAというものがあって、自衛隊に入るとそれが育つように教育されます。するとだれでも見違えるようになる。コンビニの前で地べたに座っているような若者でも、親が泣いて感激するくらいの人間になります。

 35年間自衛隊で教育され、大勢の若者たちを教育してきた私からすると、今の教育は本当に間違っていると思います。子供の人権や意志を尊重するとか言う。しかし、教育は強制から始まるんです。

 ある先生など、私が挨拶を教えるのは子供たちがそれを必要だと思ったときです、なんて言います。挨拶も強制しちゃダメだというわけですが、挨拶なんかは強制するしかない。強制されてしたがっているうちにその重要性を体得して、人にいい印象を持ってもらうために挨拶しようと考えるようになります。

 挨拶、整理整頓、身だしなみ、時間を守ること、目上の人への言葉づかい。最初は何もできなかった若者が、自衛隊でそういう人間としての基本をしっかり教えこまれることでまっとうな人間になる。テレビも新聞も決して報道しないことだからこそ、ぜひ知ってほしいと思います。