8年ぶりとなる「胃がん検診ガイドライン」の改訂を前にして、日本消化器がん検診学会が9月30日まで意見募集を行っています。

 今回のガイドライン案の結論は、「胃がん検診として推奨できるのは胃のX線検査(バリウム検査)のみであり、他の胃内視鏡検診、ヘリコバクター・ピロリ検査などは胃がん検診として推奨しない」ということです。

 胃がんは現在でも日本人の癌罹患率トップであり、その対策は国民的課題と言ってもよいでしょう。

 その予防対策として、胃がんの一番の原因とされているヘリコバクター・ピロリ菌の検査を推奨しないというのです。おまけに、胃がんの発見率が内視鏡より遥かに劣るX線検査を推奨するという決定がなされました。

 言い換えれば、「胃がんの死亡率を減らしたければ、胃内視鏡よりも精度の低い胃のバリウム検査を受けることを推奨します」という決定です。

 胃がん検診を受ける方々はもちろん“がんを早く見つけたい”と願っています。しかし、その思いが聞き入れられているとはとても思えないガイドラインだと言うしかありません。

 この決定は、医療の本来の目標であるはずの“みんなが健康で長く暮らせること”が見失われているという、医療にまつわる根深い問題を示す象徴的な出来事ではないかと思います。

最重要項目は「根拠が十分あるかどうか」

 現場の医師の感覚として、白黒の胃のバリウム検査よりもカラーの内視鏡の方が胃がん発見率が高いのは間違いないでしょう。

 しかし、ガイドライン判定の場では、いくら「さいたま市では胃内視鏡検診を導入することで、今までのバリウム検査では早期がんは20%しか見つからなかったのに、内視鏡検診では早期がんの段階で見つかる方が80%になった」と主張しても、「胃内視鏡検診の方ががんを早期に発見できることを示唆する報告はあるが、根拠(エビデンス)不十分」とされてしまいます。