(英エコノミスト誌 2013年8月17日号)

ビジネスピープルは、することを減らして考えることに時間を充てる方が成果を上げられるはずだ。

 ビジネス界のリーダーには、もっと多くのことを成し遂げるための方法や、その必要性を説く者が後を絶たない。

 シェリル・サンドバーグ氏は著書『LEAN INリーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲)』の中で、女性たちに対し、成功したければリーン・イン(一歩踏み出すの意)するよう強く勧めている。ジョン・バーナード氏は『Business at the Speed of Now(現代にふさわしいスピードのビジネス)』の実践について、同名の著書で息つく暇もないほど次々と助言を繰り出している。

 マイケル・ポート氏は営業マン向けに、著書で『Book Yourself Solid(予定を目一杯詰め込む)』コツを伝授する。そして、少しは自分の時間を確保できるかもしれないと思っている人が万が一いたら、キース・フェラッジ氏が『Never Eat Alone(直訳すれば「決して1人で食事するな」、邦題は「一生モノの人脈力」』と警告してくる。

米国人の約6割、休暇中も仕事のメールをチェック 米調査

高度な技能を持つオフィスワーカーが勤務時間の4分の1をメールの作成や返信に費やしているという調査もある〔AFPBB News

 しかし、ビジネス界で最大の問題は、少なすぎることではなく、多すぎることだ――気を散らすことや割り込みが多すぎ、形だけで意味のない行為が多すぎ、とにかく忙しすぎるのだ。

 オランダの人々は、最も時間を食いつぶしているのは会議だと考えているようで、「vergaderziekte(会議病)」という表現を使う。

 だが、2012年に米マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)が行った調査によると、原因は電子メールのようだ。調査では、高度な技能を持つオフィスワーカーが勤務時間の4分の1以上を電子メールの作成や返信に費やしていることが分かった。

 こうした現代のビジネスライフにまつわる悩みの種の中で、最大のものは何かという点については、議論の余地がある。

「リーン・イン」がもたらす過労の蔓延

 しかし、オフィスワーカーが無意味な活動を延々とやらされていることは明らかだ。管理職は会議を何時間も長引かせる。一般社員が電子メールを大量に書くのは、ほとんど労力を要しないし、何も考える必要がないからだ。さらにマネジメント業界全体が、無意味な活動のスピードをさらに速めることを目的として存在している。

 こうした「一歩踏み出す」姿勢が、過労の蔓延を引き起こしている。この傾向は特に米国で顕著だ。米国人の現在の労働時間は、1979年と比べて1週当たりで8時間半増えている。2012年の米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、仕事に就いている成人のうち3分の1近くが、一晩に6時間以下の睡眠しかとれていないと推定されるという。