「食の正論」で家庭は崩壊~超現実的食育のススメ~

味の社会学(第1回)

2013.08.20(Tue) 菅 慎太郎
筆者プロフィール&コラム概要

 育児は「毎日」の積み重ねであり、欠かすことのできない「食」は、その典型となって表れる。食が簡素化、形骸化することは、家庭の運営が危うくなっている証拠でもある。

 けれども、食育の多くは「添加物は避けて」や「天然、本物を!」「手作りが一番」というふうに、知識や手間や技術がかかるメッセージばかり。これでは、育児の理想と現実のハザマで、ぎりぎりの状況をやりくりする親を追い込んでしまうことになる。

 「手をかける」ことと「手間を抜くこと」の違いを示し、現実的な家庭生活を直視した「食育」のあり方を提言しなければ、「食」を通して「育」むことなのできないのだ。

大切なのは「子どもと触れる時間」

 乳幼児を抱える世帯では、朝の忙しい時間から自分だけでなく子どもの支度にも負われ、朝ごはんの準備にかける時間はほとんどない。結果、菓子パンやフレークなど「そのまま」や「かけるだけ」といった食になりがちだ。昼食はこどもは保育園や幼稚園、親は外食や社食で別々、夜も残業で慌ただしく帰宅し、早めに寝かせようと急いで食事、風呂、洗濯などをこなす。

 こうした平日の親のサイクルを見て、怠慢だと思うだろうか。親の切実な声は「手をかけたい、でも、手間がかかりすぎてできない」というものだ。

 「効率よく調理する方法」や「余った野菜や肉・魚の保存方法」「欲しい素材がないときの代替方法」など、食をめぐる知恵を得る機会がなく、現代の親にとって、頼りになるのは「レシピサイト」ぐらいだろう。祖父母と一緒に台所やキッチンで共同作業することは、「食の知恵」を伝承する機会となるが、そういう機会に恵まれない親にとって「加工食品」や「冷凍食品」の活用は、家庭の食生活を維持する「味方」となる。

 確かに、「解凍するだけ」「盛りつけるだけ」は、完全なる手作りからすれば、相対的な「手抜き」に当たるのだろう。しかし、子育てにおいて大切な「子どもと触れる時間」がそれで生まれるのなら、筆者は「積極的な加工食品、冷凍食品の活用」を後押ししてもよいと思う。

 冷凍食品のハンバーグだって、有名店の味を真似て味付けが調整され、もしかしたら「母の味」よりはるかにおいしいかもしれない。また、家庭よりはるかに衛生的に管理された工場で作られた食品は、猛暑が続く夏場の家庭での肉料理よりはるかに食中毒汚染のリスクを回避できるだろう。

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株式会社味香り戦略研究所 味覚参謀、口福ラボ代表
1977年埼玉県生まれ。味覚コンサルタント&コピーライター。「おいしさ」の表現を企画する口福ラボを主宰し、味香り戦略研究所では「味覚参謀(フェロー)」としてマーケット分析、商品開発を手がける。キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。渋谷珍味研究会顧問。鹿児島市新産業連携創出WGアドバイザー。


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