(英エコノミスト誌 2013年8月10日号)

立って仕事をするという流行の裏には真の科学が存在する。

 ウィンストン・チャーチルは知っていた。アーネスト・ヘミングウェイもレオナルド・ダ・ヴィンチも知っていた。今ではシリコンバレーからスカンジナビアに至るまで、世界各地のトレンディーな企業も知っている。立って仕事をすることには効用があるのだ。

 それも単に立っているだけではない。最もトレンディーな職場はトレッドミルデスクを導入している。仕事をしながら歩くよう社員に奨励するものだ。これは一時的な流行に聞こえる。だが、この流行には科学的な根拠がある。

 先進国では怠惰さが蔓延している。車を運転し、テレビを観て、パーティションで仕切られたオフィスで働く典型的な「キュービクルスレーブ」は、今も狩猟採集民として生活する残されたごくわずかな人たちと同レベルの身体活動を行うためには、1日19キロ余計に歩かなければならない。

 すべての生命体は極力エネルギーを蓄えようとするものだが、大半の欧米人がやっているほどエネルギーを節約すると、身体に悪いという証拠が増えている。実際、健康に悪すぎて命取りになることもある。

長時間動かないと、あとどれほど運動してもダメ?

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長時間動かないと、あとどれだけ高付加運動を行っても、やはり健康に悪いという〔AFPBB News

 それ自体は意外でもないかもしれない。何しろ各国の保健省は何十年にもわたり、国民にもっと運動するよう口煩く言ってきた。

 意外なのは、長時間動かない時間があると、ジョギングやジムでのトレッドミルなど、公式に認められている負荷の高い運動にどれほど時間を費やしたとしても、やはり健康に悪影響を及ぼす、ということだ。

 最新の研究によれば、むしろ必要なのは持続的な軽動作だという。とても運動とは呼べないと思うくらい低負荷な動作でも構わない。ただ立っているだけでもいい。座っていたら使わない筋肉を使うからだ。

 この分野の研究者らによると、立っていることが健康に良いという発想の歴史は1953年にさかのぼる。日々立って仕事をするバスの車掌は座った状態でシフトをこなすバス運転手と比べると、心臓発作のリスクが半分にとどまるという研究結果が医学雑誌ランセットに掲載された時のことだ。

 ところが、オーストラリア・メルボルンにあるベイカーIDI心臓・糖尿病研究所の研究員、デビッド・ダンスタン氏によると、1970年代にエクササイズや激しい身体活動の健康効果がはっきりしてくると、歩いたり立ったりする低強度活動の効果に対する関心が薄れていったという。

 だが、過去数年間で関心が再び高まってきた。確たる証拠となるほど大規模な研究は1つもないが、すべてが同じ方向を指し示している一連の疫学的研究を見て、英レスター大学のエマ・ウィルモット博士はメタ分析を行う気になった。メタ分析とは、多様な研究を統計的に有意義な方法で組み合わせる手法だ。