(英エコノミスト誌 2013年8月10日号)

ユーロ圏の救済はソブリン債務を持続不能なほど高水準にした。

 ユーロ圏17カ国という問題を抱えた楽団を指揮するドイツのアンゲラ・メルケル首相が9月22日の総選挙で3期目の当選を目指して選挙運動を繰り広げる中、組織的な沈黙がユーロ圏に舞い降りている。

 この静けさは、ユーロ圏経済が徐々に景気後退から抜け出しつつあるかもしれないという兆候にも由来している。だが、選挙の後には再び不協和音が聞こえくるだろう。欧州の救済プログラムは調和的な形で解消されず、もっと多額の請求書が届くことが明らかになっていくためだ。

 最初に救済されたユーロ圏の3カ国――2010年春に救済されたギリシャ、同年末に救済されたアイルランド、2011半ばに救済されたポルトガル――の中で、計画通りに救済プログラムから抜け出せるのは1カ国だけだろう。

 回復力のある経済に助けられ、救済資金が675億ユーロ(900億ドル)に上ったアイルランドは、今年末までに救済プログラムから脱却することになりそうだ。だが、実際には、部分的な脱却にしかならない。

アイルランドは救済から抜け出せそうだが・・・

 アイルランドはその後、資金調達需要を満たすため、公的融資ではなく民間市場に頼ることになる。欧州の関係当局や国際通貨基金(IMF)によって設定・監視される財政、経済面の厳しい条件を順守する必要はもうなくなる。だが、アイルランドは今年、資本市場への復帰で一定の成功を収めたが、再び自力で立つことには当然ながら不安を抱えている。

 今年の財政赤字は国内総生産(GDP)比7.5%と、依然高水準だ。アイルランドの銀行に対する巨額の公的資金注入によって膨れ上がった政府債務はGDP比125%に達している(図参照)。

 GDPの大きな部分が外国の多国籍企業が稼ぐ低税率の利益で占められているため、実際の債務負担はもっと重い。GDPのうちアイルランドの住民に回り、主な税基盤となる国民総生産(GNP)に対する債務比率は150%を超えている。

 自国の脆弱性を自覚しているアイルランドは、流通市場で潜在的に無制限の国債買い入れを行うという欧州中央銀行(ECB)の公約を通じて、自国の借り入れを債券自警団から守ってもらいたいと思っている。だが、アイルランドがその資格を得るためには、与信枠を提供するユーロ圏の救済基金との予備的プログラムに参加しなければならない。