(英エコノミスト誌 2013年8月10日号)

世界最大の汚染物質排出国である中国が環境対策に乗り出したが、スピードアップが必要だ。

中国のスモッグ、日本の一部地域でも確認

北京市内に垂れ込めるスモッグ〔AFPBB News

 「地獄とはロンドンによく似た街だ。人が多く、煙が立ちこめている」。1819年にパーシー・ビッシュ・シェリーはこう綴っている。この表現は今の中国の都市にも当てはまる。というのも、19世紀初頭の英国と同様に、現在の中国も工業化に牽引された急成長を遂げているからだ。

 当時の英国と同じように、豊かになりたいという衝動がきれいな空気を求める気持ちに勝り、中国の人々はありとあらゆる汚染物質を大気中に排出している。そして、英国人より多少は早く、こうした行いを改めようとしている。

 中国が単純に、貧困から汚染を経てきれいな空気に至るという、先進国と同じ道をたどっているのだとしたら、(地獄のような街に住む人を除けば)あまり心配することもない。しかし、この道は、2つの理由から、これまでの先進国とは異なるものになりそうだ。

 1つ目の理由は時代だ。英国の工業化が加速していた当時、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は数千年前と同じ水準だった。一方、現在のCO2濃度は当時の1.5倍に達し、大部分の科学者が危険レベルと考える450ppmからそれほど遠くないレベルになりつつある。

 2つ目の理由は場所だ。中国は広大で、経済が急成長しているため、世界への影響は他のどの国よりはるかに大きい。

竜の吐く臭い息

 中国の工場から吐き出される汚染物質の影響を真っ先に受けるのは、不運にも近隣に住んでいる住民たちだ。2013年1月、北京の大気の毒性レベルは世界保健機関(WHO)が定める安全基準の40倍に達していた。中国の農地の10分の1は化学物質や重金属に汚染されている。

 都市部の上水道の半分は洗濯にさえ使えず、飲用などもってのほかだ。国土の北半分では、大気汚染の影響で平均寿命が5年半も短くなっている。

 これらすべての帰結として、中国全土で抗議行動が多発しており、そこには地域エゴに目覚め始めた中間層も加わっている。こうした抗議活動の高まりは、環境保護運動がより広範な反政府運動に発展することを恐れる政府にとって悩みの種だ。そこで政府は汚染に対し、弾圧と緩和という2つの方法で対処している。

 政府は環境活動家たちを収監し、国が承認した機関に環境関連の訴訟を一任することで、司法による監督の権限を制限しようとしている。そして同時に、国土の浄化に多額の予算の投入を進めている。