(英エコノミスト誌 2013年8月3日号)

テロとの戦争が、いまだに米国を悩ましている。米国は最も大切にしてきた価値観を取り戻すべきだ。

軍事機密漏えいの米兵士、スパイ行為で有罪 「敵ほう助」では無罪

7月30日、米メリーランド州フォートミードで開かれた軍法会議の議場を去るブラッドリー・マニング陸軍上等兵〔AFPBB News

 米陸軍のブラッドリー・マニング上等兵が7月30日に、ウィキリークスに機密を漏らしたとして、米軍法会議で有罪判決を受けた。マニング上等兵には最長で136年の禁固刑が言い渡される可能性がある。この裁判は安全保障に対する米国の熱狂的な姿勢の最高到達点と言えるかもしれない。

 実際、この姿勢をこれ以上強めるべきではない。2011年9月11日の同時多発テロ以降、当時のジョージ・ブッシュ大統領は、あまりにも自由から安全保障へとバランスを傾け過ぎた。その傾きは、バラク・オバマ大統領の下でも変わっていない。

 マニング上等兵が量刑判決を待っている一方で、8月1日には、米国の諜報機関の元職員であるエドワード・スノーデン氏が、ロシアへの1年間の一時亡命を認められ、同国に入国したと報じられた。

 スノーデン氏は、米国家安全保障局(NSA)が多くの米国民の個人情報を令状なしで収集・保管していたことを暴露した。このNSAの行為は、愛国者法や合衆国憲法修正第4条に違反している可能性がある。スノーデン氏の暴露は8月に入っても続いた。その間にも、オバマ政権はジャーナリストの通話記録を押収し、情報をリークした者たちに法的制裁を加えようとしている。

不当で、愚かで、米国の理念に反する対応

 本誌(英エコノミスト)は、米国とその個人の自由に対する姿勢を心から支持している。同時に、あらゆる国において、政府の最も重要な責任が国民の保護であることも認識している。9.11以降、米国政府が自由と安全保障のバランスを調整したことは理にかなっている。だが、米国の価値観を、ブッシュ元大統領の対テロ戦争の犠牲にすべきではなかった。

 米海軍のグアンタナモ基地の収容所で、テロ容疑者を裁判なしで無期限に収容していることは、法に則った適正な手続きの否定だ。水責めと苦痛を伴う姿勢による被収容者の拷問を「強化した取り調べ」と言い換えるのは、法的な詭弁に過ぎない。

 2003年のアブグレイブ刑務所でのイラク人被収容者に対する虐待や、正式な手続きを経ない引き渡しなどは、ディック・チェイニー氏とドナルド・ラムズフェルド氏が主導した風潮の産物だ。そうした風潮は、米国らしからぬもので、米国の敵を増やすものでもある。

  オバマ大統領は拷問を禁止したが、グアンタナモの収容所は閉鎖されておらず、古い報復システムはしばしば強化されている。

 スノーデン氏もマニング上等兵も、よりリベラルなアプローチを推進する申し分のない大使ではない。2人とも、厳守を宣誓した機密情報をリークしたことで、法を犯している。米国の諜報機関は、職員が秘密を漏らしたら、機能しなくなる。「大量リーク」が政治的に流行し、技術的にも可能になった時には、それを抑止する方法も必要だ。