(英エコノミスト誌 2013年7月27日号)

デトロイトだけではない。米国の都市と州政府は約束する内容を減らさない限り、惨事に見舞われることになる。

 3年前にギリシャが財政難に陥った時、問題はすぐに広がっていった。多くの観測筋は当惑した。ギリシャのような小国が一体どうして大陸規模の危機を引き起こせたのか? 

 ギリシャは、長年にわたり借金で贅沢な暮らしをしてきた脱税者の国としてステレオタイプ化された。ポルトガル、イタリア、スペインは、自国の財政は根本的に健全だと主張していた。ドイツは、これらの国と自国にはいったい何の関係があるのかと首をかしげていた。しかし、その感染力は強く、欧州経済はいまだに回復していない。

 米国はデトロイト市の破産申請について、同じような現実否認に陥っているように見える。多くの人は、モータウン(自動車の街デトロイトの通称)はあまりに例外的なケースのため、他の地域への教訓はほとんどないと考えている。

 一時は全米第4位の人口を誇る都市だったデトロイトは概して、たった1つの産業のおかげで豊かになった。ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーはかつて、米国で売られる自動車をほぼすべて生産していた。それが今では、労働組合がない州で生産される海外ブランド車との競争のせいで、3社のシェアは全体の半分以下になっている。

 1950年以降、デトロイト市の人口は6割減った。殺人事件の発生率は全米平均の11倍に上る。元市長は刑務所に入れられている。潅木や雑草、アライグマが人けのない地域を取り返した。デトロイトが小さく、貧しくなった今、市が大きく、裕福だった時代に積み上がった債務は返済不能だ。

 他の州や都市は注意を払うべきだ。といっても、こうした州などが来年デトロイト市のような末路を迎える恐れがあるからではなく、デトロイト市は米国財政というダッシュボードの上で点滅している警告ランプだからだ。

 デトロイトの問題のいくつかは同市特有のものだが、決定的に重要な問題はそうではない。

 全米各地の多くの州政府や市政府は、年金と医療保険に関して守れない約束をした。デトロイトは、自治体の首長が公的部門の改革をあまりに先送りし過ぎた時に何が起こり得るかを示している。

インナーシティブルース

 デトロイトの債務の半分近くが、定年退職時に市職員に約束されている年金と医療保険によるものだ。全米の州や都市は一般的に、勤続年数と最終給与に基づく確定給付型年金を職員に与えている。こうした年金は、年金支払いの目的で確保されている基金によってカバーされることになっている。

 各州自身の試算では、州の年金基金は給付義務の73%しか積み立てられていない。これでも十分ひどいが、ほとんどの州は年金債務に楽観的な割引率を適用しており、債務が実際より小さく見えるようになっている。もっと慎重な割引率が適用された場合、実際の積み立て比率は48%という恐ろしい数字になる。