(英エコノミスト誌 2013年7月6日号)

長年にわたる選挙制度の不公平さが、安倍首相が約束した経済改革の足を引っ張る。

 西日本の日本海側に位置する鳥取県から東隣の兵庫県に向かっても、瓦屋根と梨の果樹園が続く風景は変わらない。しかし、目に見えないところでは違いがある。兵庫側の有権者の政治に及ぼす影響力は、鳥取県民の数分の1にすぎないのだ。

 戦後数十年間に及ぶ都市部への人口移動の結果、日本の各地域では一票の重みに大きな格差が生じている。7月21日に投票日を控えた参議院選挙で、鳥取県からは50万人弱の有権者の代表として2人の議員が選ばれる。これに対して兵庫県は、神戸という大都市を抱え、鳥取県の9倍以上の有権者を有しているにもかかわらず、議員定数はわずか4人だ。

一票の格差問題で相次ぐ違憲判決

 安倍晋三首相と与党・自民党は、その意に反して、この問題に対処せざるを得なくなった。2011年には最高裁判所が、衆議院選挙区の区割りは事実上多数の人々の選挙権を奪っており、「違憲状態」にあるという判断を下したからだ。

 それにもかかわらず、各政党は2012年の総選挙をそのままの区割りで推し進めた。安倍首相は、自民党が勝てばこの問題の解決に乗り出すという曖昧な約束をして、法廷が立法府に異議を申し立てるまでには至らないという可能性に賭けたのだ。実際、一票の格差の問題は1960年代以降ずっと政治を悩ましてきたが、最高裁が格差を理由に選挙を無効にしたことは一度もない。

 しかし2013年3月に入り、日本全国の高等裁判所が、自民党が勝利した2012年の総選挙は違憲であるという判決を相次いで下し、政治家を慌てさせた。しかも高裁のうち2つは、選挙結果を無効とする思い切った判断を示した。

 最高裁は年内にも、下級審の判決に対して判断を下すはずだ。この間、安倍政権は経済改革――金融緩和、財政出動、成長政策からなる「アベノミクス」の第3の矢――のための法整備に着手する。

 最高裁が下級審の違憲判決を認めれば、極めて重要な時期に安倍政権の正統性が揺らぐことになる。まずあり得ないと思われるが、もし最高裁が2012年の総選挙を無効とするという究極の判決を下したなら、憲法と政治の危機が訪れるだろう。

変わりつつある国民の意識

 地方の過疎化が進むにつれて、一票の格差に対する一般の関心は高まり、司法に行動を起こすよう圧力をかけている。政治家は、自らを選出してくれる制度に強く執着している。

 特に自民党は、地方で勢力を誇ってきた。同党のほとんどの議員にとって、意図的に地方の選挙地盤と支援を弱めるような措置を取るのは愚かなことだろう。国会議員はこれまで、選挙制度が若い有権者には理解し難いものである状況を当てにしてきた。