(英エコノミスト誌 2013年6月22日号)

経済的には妥当だが、政治的には難あり。

インドネシア国会、スクリーンに突然ハードコアポルノ

インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領〔AFPBB News

 どこでもそうだが、もしかしたらインドネシアでは特に、政治家はガソリン価格を引き上げる時には身の破滅を覚悟するしかない。

 それゆえ、インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領と議員らが選挙まで1年を切った状況で大幅値上げで合意したことは、燃料補助金が東南アジア最大の経済国にもたらしている痛みの大きさを物語っている。

 6月17日、インドネシア下院は1リットル当たりのガソリン価格が現在より44%高い6500ルピア(66セント)、軽油が22%高い5500ルピアになることを前提とした政府予算案を承認した。野党はこの予算に反対票を投じた。連立与党の一員である福祉正義党(PKS)も反対に回った。

 議会の外では警官隊と抗議者が衝突し、今後も暴力行為が続く可能性が高い。それでもユドヨノ大統領は6月中に燃料値上げに踏み切る見通しだ。

 議会は低所得の1550万世帯に対する9兆3000億ルピアの補償給付金の支給を承認した。4回にわたって月間15万ルピアずつが支給されることになる。

すべての人に苦痛を与える燃料値上げ

 だが、燃料価格の引き上げは、すべての人に苦痛を与える。政府は、燃料値上げが今年の消費者物価上昇率を7.2%に押し上げる一因となると見ている。7.2%のインフレは2006年以来の高さだ。一方、政府は2013年の国内総生産(GDP)の成長率予想を6.8%から6.3%に下方修正した。

 だが、燃料価格を放置した方がひどいことになる。直近で価格が変更されたのは2009年1月、原油1バレルが世界市場で45ドルで売られていた時のことだ。これに対し、現在の原油価格は1バレル100ドル前後だ。また、その間、より多くのインドネシア人が自動車や2輪車を買えるようになり、燃料の消費量が急増した。

 チャティブ・バスリ財務相は、補助金を削減する対策を何も講じなければ、政府の財政赤字が今年、GDP比3.8%まで膨らみかねないと警告していた。燃料価格を引き上げた後でさえ、2012年にGDP比1.8%だった財政赤字は2.4%まで拡大すると見られる。燃料補助金には、199兆9000億ルピア、歳入の13.3%相当のお金がかかる見通しだ。